2021 Fiscal Year Research-status Report
1990年代から2000年代のロンドンにおける具象絵画に関する研究
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19K13019
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Research Institution | The National Museum of Modern Art, Tokyo |
Principal Investigator |
桝田 倫広 独立行政法人国立美術館東京国立近代美術館, 企画課, 主任研究員 (70600881)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 現代美術 / 現代絵画 / 美術批評 / イギリス美術 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度は、ロンドンで活動する作家たちのヒアリングを踏まえながら、1990年代から2010年代にかけて、ロンドンの主要美術館で開催された絵画の展覧会履歴をまとめていった。そのことによって、1990年代から2000年代にかけて、絵画の潮流の諸相を改めて確認することができ、また同時に重要な展覧会を析出することもできた。とりわけ、2021年度は、2005年から2006年にかけてサーチ・ギャラリーにて開催された「絵画の勝利(Triumph of Painting)」展という展覧会について焦点を当てて考察した。この展覧会において、重要な役割が与えられているのが、この展覧会における唯一の物故作家であったドイツ出身の作家、マルティン・キッペンベルガー(1953~1997)である。キッペンベルガーは実に多様な活動をしていたことで知られているため、彼の活動の何に焦点を当てるかによって、その位置づけが変わる稀有な存在である。生前は知る人ぞ知る作家であったが、没後、各所で回顧展が開催され、2006年にはロンドンのテート・モダンでも回顧展が開催されているように、当時、ロンドンでも急速に受容されていった作家である。上記の課題について論文にまとめることができた。 また、1990年代以降、写真を参照して絵画を描くことは当たり前のことだが、かつてはタブー視されていた。写真を参照に絵画を制作することを公言したことで先駆的なイギリス人作家、フランシス・ベーコンについての調査も進めた。1992年にベーコンが亡くなって以来、2000年代初頭にかけて彼がどのように写真、雑誌などの資料を参照したかが、資料の発見、研究の結果によって、明らかになっていった。その過程で生じたさまざまな問題について論文にまとめた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
昨年度に引き続き、コロナ禍のため現地調査がままならず、なかなか進まない状況であった。しかしながら、科研費のおかげで多くの資料を取り寄せることができ、現状の研究体制に適応しながら、最終年度に向けて研究の見取り図を立て直すことのできた一年でもあった。
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Strategy for Future Research Activity |
1. 海外調査が可能であれば、「絵画の勝利」展がどのように受容されていたかについての考察を試みたい。というのもこの展覧会は純粋に批評的な意義のみならず、サーチというコレクターが絵画に興味を持ち始めたことを示すことによって、市場をも刺激した展覧会だったとみなされているからである。 2. 「絵画の勝利」展において、マルティン・キッペンベルガーが重要視されたように、ロンドンのアートシーンは言うまでもなく、ヨーロッパとの関係が深い。しかし地域や作家の数を拡大して調査をするときりがないので、ドイツシーンとロンドンとのかかわりについて考察を試みたい。その一人として考えているのが、ゲルハルト・リヒターである。1991年にドイツ人作家ゲルハルト・リヒターがテートで初めて個展を行い、その後もコンスタントにロンドンで展覧会を開催している。リヒターのロンドンにおける受容も研究課題のひとつである。 3. 昨年度に引き続き、ロンドンの黒人作家たちの活動についても調査を進めていく。
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Causes of Carryover |
元々、見込んでいた現地での資料調査に赴けなかったことが原因である。
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Research Products
(2 results)