2021 Fiscal Year Research-status Report
絵本制作への実践的応用を目指した文字のない物語表現メカニズムの研究
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19K13022
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
山本 美希 筑波大学, 芸術系, 准教授 (90783770)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 絵本表現 / 文字なし絵本 / 文字のないページ / 絵本学 / 物語表現 / 視覚文化 / ナラティブ / 安野光雅 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度はこれまで継続してきた文字のないページを含む絵本のデータ化の大部分を終えた。具体的には「時間の経過・状況の推移を表す」グループおよび「隔てられた時空感を表す」グループのデータ化を終え、残りは「無言・無音を表す」グループのみである。データが揃ってきたことから、それぞれのグループにおける細かな検討が可能となり、これらの調査データをもとに各グループにおいてどのような特徴が見出せるかさらに分析・考察を深めている。 また今年度は日本における文字のない絵本を手がけた最も重要な作家である安野光雅の作品を対象として資料調査と分析を行った。安野は1960年代後半に文字なし絵本を発表し、その後の日本における絵文字なし絵本へ多大な影響を与えたと言われた作家である。多彩な著作を残しているが、今回はそのうち文字のない絵本である16冊を対象として、その表現を検討した。研究の一部は雑誌『ユリイカ』に論考として掲載しており、文字のないページの考察にも援用できる考察が得られた。 そのほか令和3年度筑波大学人文社会科学研究群公開講座、東アジア若手研究者合同フォーラム、第7回コミック工学研究会にて講演者・パネリストをつとめ、研究成果の一端を紹介した。 一方、2021年度も新型コロナウイルスの感染状況の影響により海外資料調査は行うことができず、他大学の研究者との意見交換や国際学会での発表などについても予定通りに実現することはできなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2021年度もCOVID-19の影響により海外資料調査は行うことができなかったため、国内資料を中心に安野光雅を取り上げて研究を進めた。次年度についてもコロナ禍の影響が続くと考えられることから、柔軟に計画を変更して対応する。
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Strategy for Future Research Activity |
データ化の作業についてはわずかな冊数を残して終了している状態である。今年度状況が許せば、かねてより予定しているイタリアの図書館への訪問を行い海外資料の調査を行う。また次年度が最終年度となるため、これまでの調査結果をまとめ、研究会での口頭発表・論文投稿、講演等による成果発表を積極的に行う。 加えてハンドブックの完成とそれを活用したワークショップを実施するための準備を進めている。これまでの調査・研究内容をもとに成果をまとめ、絵本制作の実践に応用するためにわかりやすいハンドブックの内容・構成の検討を行なった。今回制作するハンドブックは文字のないページの表現について理解してもらうためのガイドとして将来的にも活用することを予定している。ワークショップについては2022年度もコロナ禍の影響が大きいと思われるため、規模や開催方法を変更することとした。開催時期・規模・開催方法についてあらためて検討・調整を進めており、年度内に実施する。
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Causes of Carryover |
予定していた海外渡航調査や対面での研究打ち合わせを実施できず、感染状況がよくない時期には図書館の利用や外出に制限がある状況が続いた。また留学生の大学院生が半年以上にわたり日本に入国できない状態となったため、協力してもらう予定の作業を依頼できなかった。以上のように研究活動への支障が生じたため、一部の予定していた旅費や人件費が未使用となった。来年度についても海外講師を招聘してのワークショップを検討していたが、それらの金額についても差額が生じることが見込まれる。そのことから、予定を変更して開催方法の見直しを行い、また一部をハンドブック制作や物品の費用として使用する。
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