2019 Fiscal Year Research-status Report
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19K13024
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Research Institution | Tokyo National University of Fine Arts and Music |
Principal Investigator |
田中 翼 東京藝術大学, 大学院美術研究科, 研究員 (50837234)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 作曲支援システム / 学習支援システム / アルゴリズム作曲 / 計算論的音楽学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、計算論的手法に基づく音楽書法の学習支援技術の研究開発をテーマとする。2019年度の研究成果としては主に二つの成果が出ている。一つ目は、ジェルジ・リゲティの「ピアノのためのエチュード第二番」の楽曲スタイルの数理モデル化であり、二つ目は、モチーフの組み合わせの最適化による作曲実習支援システムである。 前者に関して、エチュード第二番の固有の特徴を分析し、作品の核となる冒頭部分について、同楽曲のスタイルにおける楽曲生成問題を二段階の数理問題としてモデル化を行った。第一段階は二声部間で非同期的にリズム細胞を隙間無く敷き詰める制約充足問題としてのタイリング問題であり、第二段階は、限定された和音の使用に関する両声部間の対位法的な最適化問題である。作曲教育における実用性の観点から、音楽プログラミング環境として広く使用されているOpenMusicを実装に用いた。結果として、現実的な時間内で定義したスタイル上の制約をほぼ満たした楽曲が生成できるようになった。 後者に関しては、集団的なルールに基づく即興音楽の作曲の場面を想定し、曲の各セクションに少数のモチーフが割当てられ、それらを自由に変奏することによる即興音楽の作曲実習支援システムを構築した。具体的には、旋律の断片のモチーフ候補から各セクションに整合的なモチーフ集合を最適に割り当てる制約最適化問題としての「モチーフ割当問題」を提案し、OpenMusicで実装・求解を行った。 両者の成果において共通するのは、制約充足と最適化を二段階に分けるような実用的なモデル化の有効性が確認できたことである。一般にこの種の制約最適化問題は計算量の爆発が起こり、現実的な時間内で求解が困難であるが、制約充足と最適化の部分を分けるような段階的なモデル化により計算量を実用上抑えることができ、準最適解を現実的な時間内で求解することが可能になった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究対象としての楽曲生成支援システムのプロトタイプを実際に構築し、楽曲をアウトプットすることができる状態に至った。既に国際会議において二件の論文が採択されており、またシステムの支援により作曲した楽曲を国際会議のセレクションに応募中である。さらに、構想中の楽曲生成支援システムについて、研究会および分担執筆した書籍において発表した。したがって、一年が経過した現在までのところ、十分成果が出ており、順調に計画が進行していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
現在までの所、比較的多くの作曲家にとってなじみ深いプラットフォームであるOpenMusicを用いて実用性を重視したプロトタイプ的なシステムの構築を行ったが、今後の研究の方向性としては、OpenMusic上ですでに対応している数理手法に限定しない、より高度な音楽書法モデルに発展させることを計画している。
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Causes of Carryover |
国際会議等での研究発表の時期が予定より早まったことや、研究分野の重要なイベントがあったため、次年度以降の分からの前倒し使用の申請を行った。その際、年度中に使用できる研究費が不足してしまうことを防ぐため、結果論としてはやや多めに確保する形となり、未使用分が残ることとなった。この未使用分は、もともと次年度以降の分であったため、最初の予定通りに使用される。
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