2019 Fiscal Year Research-status Report
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19K13030
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Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
吉田 大海 近畿大学, 工学部, 講師 (80637398)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 非写実的レンダリング / 鉛筆画風変換 / 画像処理 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度において、本研究の目的となっているVR鉛筆画の基礎となる画像処理技術、その開発と進展について順調な成果が得られた。具体的には、VRカメラで撮影した視差画像に対する鉛筆画風変換と、その動画化を行う基礎的なシステムを試作でき、立体鉛筆動画を実機として実現することができた。また、それと関連する画像処理技術『明るさ補正』『消失点検出』等について知見が得られた。 鉛筆画生成に直接関係する、特に大きな点について述べる。 鉛筆画の線分生成に用いるパラメータ、動画表示する際の適切なフレームレート、そしてハッチング(鉛筆画に見られる線分の重ね書き・濃淡表現の技法)などは以前課題であり、値域を主観的に定める程度に留まっているものの、実機が実現したことで、今後の検証も順調に進むものと考えられる。 課題となっている上記パラメータを決定する基準には、ある程度の客観的な指標が必要となるものの、『非写実性(イラスト風・アニメ風の度合い)』『没入感』『鉛筆画としての美しさ』『鑑賞におけるストレスの少なさ』など、主観的な要素が主な基準になると考えられる。これらは実機を使用しての検証によって初めて評価できる指標となる。被験者による定量評価はまだ実現していないが、研究代表者が使用し、大まかなながらパラーメータの方針を決定する材料が得られた点も大きな成果と考えられる。 また、上記のように課題は多く残されているものの、上記システムで作成した立体鉛筆画動画をスマートフォン上で再生し、簡易VRゴーグルを用いて鑑賞することで、鑑賞者に『立体的な鉛筆画体験』をもたらすことを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究は順調に進展している。実機として試作システムを作成、検証できるようになった点は特に大きな進捗であり、今後の検証もスムーズに進んでいくことが期待できる。 反面、実機を運用して見えてきた新たな課題について、これを本研究計画内に含めて解決を図っていくかは検討の必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、特に重要な研究課題となるのは①『動画表示する際の適切なフレームレート』②『視差画像におけるハッチング』である。 ①について述べる。フレームレートとは、動画を作成する際に1秒間に表示する静止画の枚数であり、フレームレートが高いほど、現実世界に近い滑らかな動画となる。しかしながら、本システムで高いフレームレートで動画生成を行うと、鉛筆画の性質上『ちらつき』『シャワードアエフェクト』といった鑑賞のストレスになる弊害や、鉛筆画らしさを損なうエフェクトが生じる。これらはフレームレートを下げることで改善が期待できる。さらに、鉛筆画の持つ非写実性を強めるためにも、フレームレートを下げることが有効だと考えられる(これは、多くのアニメが秒間30フレーム以下で描かれているためである)。しかし一方、VR体験で最も重要な要素となる没入感には、高いフレームレートでの運用が重要となる。フレームレートの影響は没入感だけではない。低フレームレートとそれがもたらす現実動作に対する遅延は、VR酔いの原因になることも指摘されている。VR酔いの程度には個人差があるが、体調に関わる要素という点で無視できない要素だと考えられ、引き続き検討課題となる。 ②について述べる。『ハッチング』は上述した通り、線分の重ね書きが作る鉛筆画の濃淡表現である。課題は研究計画で想定していたものが主要であり、左右の視差画像で個別に生成されるハッチングの見え方についての検討が必要となる。その他、実機の運用で新たに見えてきた課題として、距離の違う物体のハッチング同士が、一枚の連続したハッチングで表現されることである。これにより、体感する距離感が狂うことがあり、この点はハッチングの書き分けをすることで解決したい
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Causes of Carryover |
研究で使用する画像処理システム(ノートPCやSSD)に価格変動があり、その点と研究計画を照らし合わせて物品を選択・購入したため。
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