2021 Fiscal Year Annual Research Report
文化政策における文化財保護行政の位置:70年代以降の埼玉県文化行政の分析
Project/Area Number |
19K13035
|
Research Institution | Josai University |
Principal Investigator |
土屋 正臣 城西大学, 現代政策学部, 准教授 (00825896)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 文化行政 / 文化財保護行政 / 革新自治体 / 文化開発 / 文化のサイクル / 文化政策 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、革新自治体における文化行政のトップランナーであり、かつ文化財保護行政が文化行政の礎を構築していった埼玉県を事例として取り上げ、文化財保護政策分野が文化政策総体に与えた影響について明らかにすることである。 この目的に沿って申請者は、埼玉県を中心とした文化財保護運動の分析を通じて、「民」の文化財保護運動が「官」へと組み込まれていった現状を明らかにしてきた。また、文化財保護政策に関する資料調査を埼玉県を中心に京都や神奈川で実施する一方、埼玉県内の県立文化施設において現地調査を展開してきた。 最終年度では、これらの調査による知見を踏まえて、文化財から生み出される地域イメージを新住民・新住民相互のコミュニティ形成や市民参加による都市整備へと応用されたように、文化行政において文化財保護政策が積極的な意味を持っていたことを明らかにし、今日の文化財の保存と活用の好循環形成を考える上で重要な示唆を得ることができた。 同時に調査を進める中で、90年代以降の文化施設整備のような都市基盤整備事業への傾注など、文化行政の変容に伴って、ソフト事業としての文化財保護を通じた文化行政は、開発行政としてのハード重視の事業へと転換していった状況が判明した。文化による開発=文化開発によって文化財保護政策を含めた文化行政は、開発の手段となり、文化施設建設に注力しがちな今日の文化政策へと繋がっていることを把握した。 新たな課題の発見に伴って企画したのが、文化開発研究会である。その第1弾として「開発という切り口から文化を考える」(日本文化政策学会)を開催し、文化財保護政策を組み込んだ文化行政が、新たな地域開発手段に組み込まれている今日的状況を参加者と共有し、その解決策について議論を深めた。
|
Research Products
(5 results)