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2021 Fiscal Year Research-status Report

近代日本画における画紙の特質による技法の展開

Research Project

Project/Area Number 19K13036
Research InstitutionTama Art University

Principal Investigator

チン ホウウ  多摩美術大学, 大学院美術研究科, 助教 (80838590)

Project Period (FY) 2019-04-01 – 2023-03-31
Keywords画紙 / 麻紙 / 和紙の歴史
Outline of Annual Research Achievements

2021年度は、画紙の史的な文献調査に重点をおいて、日本の麻紙の抄造の歴史をまとめた。
越前(福井県)の製紙家、初代岩野平三郎は、大正後期から昭和初期に絵絹に代わる支持体として、近代日本画用の画紙を開発した人物である。日本画の主要な支持体が絵絹から画紙へと移行する中で、越前の岩野家による抄造活動が重要である。多くの抄造活動の中、麻紙の製法を復活させたことが大きな貢献であることがわかった。
明治期の日本画紙の使用状況に鑑みると、大正時代以前の日本画家は主に中国紙、あるいは楮や雁皮、三椏から漉かれた鳥の子紙を用いて制作が行われていた。画紙に対する信念を持った岩野は、新たな日本画用紙として楮を主原料とする「大瀧紙」「大徳紙」を開発し、大正14年から麻紙の「復活」を試みた。そして研究者や画家に完成した麻紙を送り、検分や絵画の試作を依頼したことが多数の往復書簡からわかった。その後も岩野と画家達の試行錯誤を経て、様々な麻紙が生産されたのである。例えば、大正14年に横山大観の注文を受け、早稲田大学の壁画のために一枚三間四方(一辺5.4メートル)の巨大な「岡大紙」が漉かれた。また昭和3年には、昭和天皇即位御大礼に用いる新調屏風料紙の「白鳳紙」を抄造するなど、用途に合わせ厚口で幅が広くかつ丈夫な麻紙を誕生させている。
現在日本画に用いられる麻紙は厚く丈夫な画紙が主流である。このような画紙が抄造された経緯は、当時の表現にも依拠すると思われる。以上、日本の麻紙の抄造歴史をまとめたものは台湾の新営文化局によって主催される展覧会『瀛風飄藝』の図録にて掲載される予定である。
一方、制作実践において、今年度は岩野平三郎製紙所で抄造された「雲肌麻紙」を中心に制作を行った。日本の公募展団体以外、個展、グループ展においても作品を発表していた。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

3: Progress in research has been slightly delayed.

Reason

2020年度までに、新型コロナウイルス感染症の影響のため、2年間美術館および製紙場で直接作品を実見することができず、作品と画紙の分析が遅れている。感染拡大の状況がまだ継続している中、まず2021年度において、紙の歴史的な文献調査に重点をおいて、日本麻紙の抄造の歴史をまとめた。そのために、関連する同時代の麻紙の抄造と関わる画家と製紙場の往来書簡を調査し、内容をまとめた。しかし、本研究の目的である、画紙の特質と絵画技法の展開について、まだ明らかにできていないため、研究の進捗状況はやや遅れていると判断した。従って、本研究の調査期間を一年間延長することに至った。

Strategy for Future Research Activity

2022年度には、以下の3つの方向で本研究を進めていく。
一つ目は、画紙の原料の調査である。原料として日本の三大楮、すなわち、那須楮、土佐楮、八女楮について調査する予定である。日本の画紙において、楮が最も重要な原材料であり、地域・気候・土地環境の差によって、靭皮繊維の品質が異なる。よって、抄造された紙も特質が異なると考えられる。2021年度の調査に続き、土佐楮(高知県)と八女楮(福岡県)について現地調査を行う。
二つ目は、制作実践研究である。現在日本画で主に使われている麻紙、楮紙および水墨画に用いられる画仙紙を制作実践し、それぞれの特徴と可能性を比較して、有効な制作方法を確立する。
三つ目は、研究成果の公開である。本研究の考察の成果として展覧会『紙の水墨・水墨の紙-日本画の新たな可能性』(仮題)を開催する。実践研究の成果(作品)について日本で公開展示する予定である(新型コロナウイルス感染状況に鑑みて、韓国の釜山市において研究成果を公開することも計画中)。そして、展覧会の開催とともに調査報告書「近代日本画における画紙の特質による技法の展開および実践研究報告書」(仮題)を作成、パネルを設置し公開展示する予定である。

Causes of Carryover

2022年度は、日本の三大楮の2つである土佐楮および八女楮を調査するため、高知県尾崎製紙所(高知県/国内旅費)、および福岡県の秋月和紙(秋月市)、溝口製紙所(八女市)(福岡県/国内旅費)など現地で聞き取り調査および原料の分析を行う。調査地への旅費は新幹線および飛行機代を計上する。また、製紙場は辺鄙のため、レンタカーを併用する可能性もある。
そして、昨年からの引き続きで消耗品費として、申請者は先行して行った研究にて、基礎的な資料収集を行ってきたが、不足している関連文献の費用を計上する。資料は経費消減のため、図書貸し出し可能なものは、貸出しにより利用する(交通費・文献複写費のみ計上する)。そして、紙の原料分析のため、デジタル顕微鏡を計上する。デジタル顕微鏡は画紙の繊維の絡め具合を調査するための拡大写真を取るために計上する。なお、印刷のため、プリンター、インクジェットも計上する。また、実践研究費用において、多種の和紙と画仙紙、韓紙を計上する。それに関連して成果物を還元するための画材と制作に必要な物を計上する。最後に研究成果を公開するために、研究報告書の印刷費、編集費および展覧会開催に必要な経費(宣伝費・発送費・運搬費など)を計上する。

Remarks

研究発表:寄稿論文「浅談日本「麻紙復活」」(中国語)『瀛風飄藝』(展覧会図録)、2022年
成果発表:「第47回東京春季創画展」、「第48回創画展」入選。個展「Gift」開催、グループ展「現代日本画の系譜-タマビDNA展」、「第7回風の会-フィレンツェ賞受賞作家展」、「始まりの場所からその先へ-筑波大学修了生有志による日本画制作展」、「Will+s 展 2021」等出品

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Published: 2022-12-28  

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