2019 Fiscal Year Research-status Report
ワーグナー《神々の黄昏》の初演パート譜に基づく楽譜校訂
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19K13037
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Research Institution | Toho Gakuen School of Music |
Principal Investigator |
岡田 安樹浩 桐朋学園大学, 音楽学部, 講師 (70836022)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 楽譜校訂 / 批判校訂版 / 歴史的情報に基づく演奏実践 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の申請時点では、2019年夏頃までに研究の遂行のために必要な楽譜資料(《神々の黄昏》初演パート譜)すべてのデジタル・データ化を所蔵図書館に依頼し、デジタル画像を用いて作業を行う予定であった。当該資料の所蔵元であるバイエルン州立図書館音楽部門にも、資料のデジタル化については事前に了承を得ていた。2019年6月に同図書館を再訪問し、担当者と共に当該楽譜資料を確認し、同図書館の制度に従って正式にデジタル化の申請を行った。しかし、帰国後の7月中旬に同図書館の担当者より、種々の理由から「全体のデジタル化はできない」との連絡が入った。メールで交渉を続けた結果、全体の3割程度のデジタル化を受け入れてもらった。内訳は、弦楽パート各1部(第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、コントラバス)、ピッコロ、第6ホルン、第7ホルン、第8ホルン、打楽器である。 データは8月末頃から2020年1月までの間に、3回に分割されて送付された。到着分から順次作業を行い、2020年2月までに弦楽パートに関しては必要な異同のチェックを終えた。提供されなかった部分については現物を再調査する他に研究を進める術がないため、2020年2月に同図書館を再訪し、弦楽器パートの重複分(各パートの複数の複本が存在する)の調査を行ない、そのうちのおよそ半数の調査を終えることができた。 この時点の計画では、3月に残りの半数について調査を行う予定であったが、ヨーロッパにおいて新型コロナウイルスの感染が急速かつ爆発的に広がった影響で、バイエルン州立図書館もすべての業務が停止されたため、当該の調査は見送らざるを得なくなった。同時に、予定していたバイロイトのワーグナー資料館での資料調査も見送らざるをえなくなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
申請時点では予期できなかった2つの理由から、本研究の進捗状況は当初予定よりもやや遅れている。第1の理由は、申請時点では必要資料のすべてをデジタルデータで入手し、それに基づいて作業を行う予定だったが、所蔵元の方針変更にともない、部分的にしか当該データを入手することができなくなり、本来は予定していなかった現地調査を複数回にわたって行う必要が生じたことである。第2の理由は、新型コロナウイルスの感染爆発の影響による図書館および資料館の機能停止・制限のために、予定されていた現地調査の一部が行えなくなったことである。調査対象資料を所蔵するバイエルン州立図書館とワーグナー資料館はドイツ国のミュンヘンとバイロイトにあり、ドイツと日本の間での入国制限が緩和ないし解除されない限り、本研究の進捗はさらに遅れる可能性がある。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウイルスの感染拡大に一定の収束目処がたつなどし、ドイツにおける日本からの入国制限が緩和・解除され次第、ある程度の長期間滞在によって集中的に現地調査を行い、遅れをとり戻す予定である。制限の緩和等が期待できないと判断される場合には、予算と先方の都合が許せばであるが、未調査かつ未入手部分のデジタル化を依頼することも検討している。
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Causes of Carryover |
楽譜資料のデジタル・データ化が希望通り受け入れらず、必要な予算に差額が生じた。楽譜資料すべてのデジタル化が叶わなかったため、現地調査によって補う必要が生じた。しかし、新型コロナウイルスの感染爆発が発生したことにより、現地調査を行える見込みが立たなくなったため、旅費交通費についても余剰が発生した。今後、ドイツの入国制限が緩和され次第、現地調査を行う予定であり、差額についてはそのための予算としたい。
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