2020 Fiscal Year Research-status Report
ワーグナー《神々の黄昏》の初演パート譜に基づく楽譜校訂
Project/Area Number |
19K13037
|
Research Institution | Toho Gakuen School of Music |
Principal Investigator |
岡田 安樹浩 桐朋学園大学, 音楽学部, 講師 (70836022)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 楽譜校訂 / 批判校訂版 / 歴史的情報に基づく演奏実践 / コピスト / 筆写譜 / 楽譜の筆跡研究 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年3月に予定され、見送りとなっていたミュンヘンのバイエルン州立図書館での追加調査は、パンデミックのために2021年度も実施することができなかった。そのため、すでに検証を終えている弦楽パート各1部(第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、コントラバス)、ピッコロ、第6ホルン、第7 ホルン、第8ホルン、打楽器(ティンパニを除く)の各パート以外の校訂作業については進展がなかった。 その一方で、すでに入手している画像データをもとに、コピストたちの筆跡分析をより詳細に行なった結果、これまで同定できていなかったコピスト3人を同定することができた。その中には、これまで当該の楽譜資料の作成に携わった記録のない人物もおり、これはワーグナー研究における新事実の発見である。また、筆跡分析が進展したことにより、楽譜中に見られるさまざまな書き込み(大半が長年にわたる使用の中で記入されたもの)のうち、初演時に遡るものがあることが明らかとなった。 さらに、別の研究課題として取り組んでいた《神々の黄昏》ウィーン初演(1879)で使用されたパート譜の研究(すでにデジタル画像データを取得済み)において、このうちの一部がバイロイト初演(1876)の楽譜資料から直接作成されたものであることが明らかとなった。これによって、バイエルン州立図書館所蔵のパート譜セットに欠けているパートについては、ウィーンの資料によって補うことが(部分的に)できることとなった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウイルスの世界的流行により、ドイツ、ミュンヘンでの資料の追加調査が行えない状況が続いているため。
|
Strategy for Future Research Activity |
引き続き、追加調査の機会を模索する。それと並行して、未デジタル化のパートについてもデジタルデータ化を行なってもらえるよう担当者に働きかけ、検証の終わっていないパートの分析に着手できるよう努める。新たな補足資料であるウィーン初演パート譜の分析も同時に進める。 いずれにしても、現地での再調査なしに本研究を終えることはできないため、状況次第で研究期間の延長も検討する。
|
Causes of Carryover |
2020年度に予定していたバイエルン州立図書館での追加調査が、パンデミックのために行えなかったため。2021年度も引き続き追加調査の機会を模索する。次年度分と合わせてこの目的のために使用する。
|