2023 Fiscal Year Research-status Report
ワーグナー《神々の黄昏》の初演パート譜に基づく楽譜校訂
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19K13037
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
岡田 安樹浩 慶應義塾大学, 文学部(日吉), 講師(非常勤) (70836022)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | ワーグナー / ニーベルングの指環 / 神々の黄昏 / 楽譜の筆跡研究 / コピスト / 楽譜校訂 / オペラ研究 / 歴史的情報に基づく演奏実践 |
Outline of Annual Research Achievements |
2023年度は、5月より外国での追加調査を再開できる見込みがたち始めたものの、現地調査は実現できなかった。そのため、2023年度中に研究を完成させることができなかったが、関連する楽譜資料の新発見があり、これまでの研究成果が補強されることとなった。 新たに発見された資料とは、《神々の黄昏》の自筆総譜から直接筆写された筆写総譜で、初演パート譜の作成時に原本楽譜として使用され、ショット社刊行の初版総譜の彫版見本楽譜(版下)としても使用されたものである。すなわち、本研究課題である「初演パート譜」の作成過程に深く関わった資料であり、自筆総譜完成から初演までの間に行われたと想定される作曲者による修正をも記録している可能性が高い資料である。 本資料は1984年以来、公には所在不明となっていたが、これまでの研究過程において、フランスのプライヴェート・コレクションになっているという情報を得ていた。本資料は本研究にとって極めて重要な資料のひとつであるため、閲覧を実現すべくこれまでもコレクションの管理に関連する団体等を調べ、問い合わせを行っていたが、不首尾に終わっていた。 しかし2023年8月に、現在このコレクションを寄託されているパリのフランス国立図書館に問い合わせたところ、現所有者との仲介を引き受けてくれることとなり、交渉の結果、全ページをデジタル画像データとして取得することができた。年度の後半は本資料の分析に費やし、新しい事実を複数発見するに至り、その公表のための準備を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
外国での追加調査が実現できなかったことに加え、新資料の発見があり、その分析を行う必要がでたため。
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Strategy for Future Research Activity |
新発見資料の分析結果を学会発表等で公表する。さらに、実現できていなかったミュンヘン、バイロイト、ウィーンでの追加調査を行い、研究を完成させる。
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Causes of Carryover |
次年度使用額は、2023年度中に行う予定だったミュンヘン、バイロイト、ウィーンでの追加調査が実施できなかったために生じた。2024年度にこれを行うため、その旅費等として使用する予定である。
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