2020 Fiscal Year Research-status Report
Cross-Disciplinary Study on the Exchange and Conflict of Japanese Artists Born in the 1930s
Project/Area Number |
19K13048
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
堀江 秀史 東京大学, 大学院総合文化研究科, 助教 (10827504)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 寺山修司 / 戦後日本 / 写真史 / メディア論 / 中平卓馬 / 森山大道 / 篠山紀信 / 1960年代 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、1960年代に「若手」として活躍し始める1930年代生まれの日本の芸術家たちの領域横断的活動の実際を明らかにし、戦後日本の芸術史の新たな相貌を照らし出そうとするものである。3年間を通じた本課題においてはその端緒として、寺山修司を軸に同時代の横の繋がりに着目して研究を進めている。 2020年度は、戦後日本の写真界に着目して、寺山が批評家として若手写真家たちを支えた1960年代と、写真実作に活動の幅を拡げる70年代について、雑誌、写真集などの当時の原資料にあたって実証的に調査し、その成果を『寺山修司の写真』(青土社、2020年11月)にまとめた。 同書前半にて、1960年代においては、東松照明、細江英公などVIVOとその次世代にあたる中平卓馬、森山大道らのPROVOKEの活動と寺山の理念ならびに実際上の接点を明らかにした。また後半では、70年代に関して、彼らの活動を批評家として見つめた先にあった寺山自らの写真家としての活動を、篠山紀信との競合関係とともに論証した。寺山修司の写真家としての活動は、寺山研究においても写真史研究においても、これまでまとまった研究が存在しておらず、日本写真史上の大きな流れのなかで寺山の果たした役割が、同書において初めて描き出された。また、寺山研究に対しては、同時多方向的な寺山の活動が、写真においても生涯にわたって緩むことなく遂行されたことを示し、新たな知見を加えた。同書の外部評価として、近現代日本文学研究者の守安敏久氏による書評が『週刊読書新聞』(2021年1月22日)に掲載された。 また、2019年度に出版した『寺山修司の一九六〇年代 不可分の精神』(白水社)を、適宜修正のうえ、20年度に電子版として同社から刊行した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度に続き、二冊目の書籍を出版することができた。これまでのところ、申請書に記したとおりの予定で成果を上げることが出来ており、順調な進展と考えている。 新型コロナによるニューノーマルな世相によって出張の機会はほぼ無くなってしまったが、自宅での研究環境の整備と資料収集に方針を転換して研究を遂行できた。
|
Strategy for Future Research Activity |
三ヵ年の研究計画最終年度にあたる本年は、これまで主に研究者向けに発表してきた内容に加えて、例えば演劇や漫画など、これまで扱ってこなかった分野に関する寺山の活動を調査し直し、総合的な観点から見た寺山像を、より一般に開かれた形態で広く社会に届ける。すなわち新書での出版を、年度内の目標とする。別途始まっている文学館利活用に関する共同研究とも連携して、人文学と社会の結びつきを意識した研究活動を行なう所存である。 なお、当初計画では、寺山の活動を西洋哲学との結びつきから捉えることも目標としたが、すでに出版計画が進んでいる上記研究を優先し、これについてはより長期的な展望のもと、今後の課題として展開したい。
|
Research Products
(2 results)