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2021 Fiscal Year Research-status Report

近世前期における〈勧化〉――勧化本作家の活動に注目して――

Research Project

Project/Area Number 19K13049
Research InstitutionThe University of Tokyo

Principal Investigator

木村 迪子  東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 特別研究員 (40836475)

Project Period (FY) 2019-04-01 – 2023-03-31
Keywords近世仏書 / 近世文学 / 勧化本 / 説話 / 浄土宗 / 浄土真宗
Outline of Annual Research Achievements

今年度は以下の通り研究成果報告を行った。
一、禅問答の一である「倩女離魂」に注目して、従来禅宗由来とされてきた本話が、実は近世前期に板行された勧化本にしばしば用いられていた事実を指摘した。勧化本においては真宗系ならびに浄土宗系の2系統に分かれることが調査から明らかになった。特に、真宗系「倩女離魂」の例として、本願寺派の勧化本作家・妙音寺の著述を取り上げた。その過程において、妙音寺の著述一覧、また、かなり近い関係にあると推定される同時代の勧化本作家・了信についても言及した。
一、最初期の勧化本の例と見なせる『浄土勧化標目章』に収録される恵心僧都(源信)母の諌言の和歌説話を取り上げた。従来、真宗由来の和歌説話とされてきたものが、『浄土勧化標目章』に収録されていることから、浄土宗由来であった可能性を指摘した。すなわち、『浄土勧化標目章』所収話が浄土真宗本願寺派の羊歩の著した『往生要集直談』とほぼ合致すること(しかし、引き写しとは見なしがたい)。それだけであれば先行する『往生要集直談』からの影響と示唆されるが、『浄土勧化標目章』には羊歩の他の著述との共通話も複数認められ、その中に羊歩の処女作と推定される『拾穂書』との合致も見出せたこと――前年度の研究成果により、『拾穂書』時点で羊歩はまだ本願寺派に改宗していなかったと推定される――から、これが浄土宗由来の説話であったと見込めること、以上を明らかにした。
上記からは、近世仏書における、出版を契機とする宗学の交雑化を指摘できる。筆者は従前浅井了意の仏書において、その内容が真宗者であるにもかかわらず、真宗的ではない点を指摘した。しかるに、同時代の勧化本においては、当該宗派であることを喧伝しながらその実、他宗派の独自性を流用することに抵抗がなかったと見込まれるのである。これは近世仏書研究において、念頭に置かねばならない事実である。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

コロナ禍において、依然として計画の変更を余儀なくされている。外部機関への調査がほぼ不可能になったためである。当該状況はしかし、諸機関における画像データの公開、また古典籍の購入によりある程度解決が可能であった。課題としてあげた妙音寺、空誓、玄貞3者については研究成果発表を完遂している。(くわえて、予定外の羊歩や真海についても今年度は成果報告を上梓できた)また、研究全体の結論にも繋がる発見――近世仏書においては宗学の交雑化が行われてきた可能性が高い――も示し得た。
以上から、研究は概ね順調に進展していると考える。

Strategy for Future Research Activity

最終年度として、今年度は総括を念頭に置きつつ白慧の仏書の精査を行う。白慧は俗学者・坂内直頼、もしくは好色本にかかわった山雲子の名で知られる人物であるが、一方で浄土宗僧侶としての側面も持っていた。しかるに、白慧の仏書についてはこれを積極的に精査した先行研究を見出しがたい。本研究はこれを直接的な問題と見込んで精査を試みる物である。手順としては、まず、白慧著とされる仏書の抽出ならびにテキスト収集を行う。次に、収集したテキストからテキスト・版面・出版事項のデータ登録を行い、白慧の仏書執筆における性格を示したい。
近世前期に流行した「勧化」を冠する一連の仏書群――これを本研究では「勧化本」と総称するのだが――はその精査が看過されてきた。しかし、3年の調査からは近世仏教のみならず、近世文学における勧化本の重要性を示せた。白慧の仏書出版とその背景を明らかにすることは、その意義を確実な物にすることができると見込む。

Causes of Carryover

新型コロナウイルスの流行により、調査予定機関が学外者の入構を認めない事例が多く発生した。そのため、本来ならば発生するはずだった旅費が0になった。調査に行けなかった一部は書籍購入により補っているため、物品購入費が増加している。

  • Research Products

    (4 results)

All 2022 2021

All Journal Article (3 results) (of which Peer Reviewed: 3 results,  Open Access: 1 results) Presentation (1 results)

  • [Journal Article] 勧化本作家玄貞と一七世紀末上方出版2022

    • Author(s)
      木村迪子
    • Journal Title

      国文学研究

      Volume: 196 Pages: 86-99

    • Peer Reviewed / Open Access
  • [Journal Article] 勧化本に見る近世仏書の特質 : 「倩女離魂」を例として2022

    • Author(s)
      木村迪子
    • Journal Title

      近世文藝

      Volume: 115 Pages: 17-29

    • Peer Reviewed
  • [Journal Article] 源信母・諌言の和歌にみる近世期におけるハナシの発現2021

    • Author(s)
      木村迪子
    • Journal Title

      佛教文學

      Volume: 46 Pages: 144-156

    • Peer Reviewed
  • [Presentation] 勧化の素材としての漢籍受容 ――〈倩女離魂〉を例として――2021

    • Author(s)
      木村迪子
    • Organizer
      2021年度日本近世文学会春季大会

URL: 

Published: 2022-12-28  

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