2023 Fiscal Year Research-status Report
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19K13070
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Research Institution | Sugiyama Jogakuen University |
Principal Investigator |
高橋 麻織 椙山女学園大学, 国際コミュニケーション学部, 准教授 (80588781)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 平安時代の生育儀礼 / 源氏物語の准拠論 / 源氏物語の歴史性 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究成果としては、まず、河添房江・松本大編『源氏物語を読むための25章』(2023年5月刊行、武蔵野書院)に掲載した「通過儀礼と皇位継承から竹河巻を読み直す」がある。これは、「通過儀礼」をテーマに原稿依頼を受けたもので、他の執筆者と重複しないよう『源氏物語』の巻を定める必要があり、「竹河」巻となった。「竹河」巻に描かれる冷泉院の皇子・皇女の誕生時、生育儀礼がどのように描かれているか、従来の研究では取り上げられることのなかった観点から論じた。 物語における生育儀礼は、新生児の将来性を示唆するものと理解できる。「竹河」巻で誕生した皇子の描写が少ないこと、生育儀礼の描写も詳細ではないことは「宿木」巻で誕生した匂宮の皇子のそれとは対照的である。このように、物語の皇位継承の問題と関連付けて結論づけた。 2023年度は、2月末に2023年中古文学会秋季大会でのシンポジウム「〈紫式部〉研究の今とこれから」における基調報告の依頼を受けたので、それを中心に研究を進めた。依頼内容は「源氏物語の歴史性」であったので、『源氏物語』准拠論の現在の問題点を解決するため、古注釈書の悉皆調査に取り組んだ。具体的には、古注釈書に掲載される『源氏物語』成立期以降の史実と、古注釈書に掲載される歴史物語の引用の二点である。その結果、両者の問題に関わるテーマとして、『源氏物語』に描かれる三代の「源氏の后」について、古注釈書が後朱雀天皇の後宮の事例を挙げ、そのことが歴史物語の本文引用によって説明されることについて考察した。 まず、「源氏物語の歴史性―〈紫式部〉にどう立ち向かうか―」(2023年10月14日)と題して基調報告を行った。それを踏まえて、『中古文学』第113号掲載予定の論文「源氏物語の歴史性―「源氏の后」をどう読むか―」(2024年5月刊行予定)を脱稿した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2023年度は、概ね、予定通り研究が進められたと思う。ただし、2023年2月にシンポジウム基調報告の依頼を受けてから、10月のシンポジウム、2024年1月の論文提出と、ほぼこの調査と考察にかかりきりになってしまった。「源氏の后」に関する古注釈書の悉皆調査が、生育儀礼の研究と関連する内容もあったが、直接的な調査・考察が手薄になった部分もあったと思う。また、大河ドラマの影響で、外部からの講演依頼が多く、研究活動に十分な時間を取ることができなかったのも理由としてある。当初予定していたエフォートの通りにはいかなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
2024年度は、依頼論文を中心に研究を進めていきたい。まず、9月締切の論文では、また「竹河」巻を取り上げ、「桐壺」巻との類似性に着目して考察する予定である。特に、ヒロインをいじめる相手が「弘徽殿女御」であることの意味を両巻の比較から論じたい。 また、2025年に刊行予定の川村裕子編『平安装束の陰影』(武蔵野書院)では、やはり生育儀礼と関連した原稿依頼を受けている。これに掲載する論文として、「紐」に着目して調査したい。具体的には、袴着の儀や裳着の儀における「腰結の役」の政治性である。これは、生育儀礼の研究と関連する内容になると思う。適宜、研究会や学会でも研究発表する機会があると良い。
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Causes of Carryover |
コロナの影響で学会がオンライン開催となり、当初の予定よりも旅費の支出が減ったことがある。研究会も、対面とオンラインのハイブリットで開催されることが多く、わざわざ現地に赴く必要性が低くなったことも理由としてある。
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Research Products
(2 results)