2021 Fiscal Year Research-status Report
中世天台寺院における児灌頂儀礼の生成と流伝に関する研究
Project/Area Number |
19K13076
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Research Institution | Osaka University of Economics |
Principal Investigator |
辻 晶子 大阪経済大学, 経営学部, 講師 (40825428)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 児灌頂 / 長楽寺 / 談義所 / 赤白二滞 / 稚児 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、中世の密教儀礼である児灌頂について、談義所の学僧による伝本の書写活動に焦点を当て、儀礼の生成と流布の実態を明らかにすることを目指すものである。 2021年度は、2019~2020年度に情報収集を行った、児灌頂儀礼の生成の場として推定される長楽寺(群馬県太田市)や、児灌頂伝本の書写活動の場となった月山寺(茨城県桜川市)、江戸崎不動院(茨城県稲敷市)の談義所寺院について引き続き文献調査・分析を行った。特に江戸崎不動院については、2022年3月に稲敷市立歴史民俗資料館で調査を行った。同館の展示やシンポジウムから、歴史研究の方面における不動院の位置づけを確認することができたのは大きな収穫であった。 また、刊行された寺院調査の成果を精査した結果、『真福寺善本叢刊〈第三期〉神道編第三巻 御流神道』に収載された「十二所権現法楽次第」(写本・巻子本・一巻)の中に、「児僧大事」「小児懐犯法」「男子犯罪消滅法」等の児灌頂と近しい内容を持つ記述を確認することができた。これらの真言系統のテクストと、天台の児灌頂の接点をさらに調査し、その成果を2022年に発表する準備を進めている。 2021年度も2019、2020年度に引き続き、新型コロナウィルス感染拡大の影響を受けて寺院の実地踏査は行うことは叶わなかったが、刊行された資料をもとに児灌頂の生成と伝本の書写活動を考察するとともに、児灌頂を限定的な儀礼としてではなく、中世の全体的な傾向として捉え直す試みを行った。さらに研究を深化させ、今後の研究成果の公開に活かす予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2021年度も、2019、2020年度に引き続き新型コロナウィルス感染拡大の影響を受け、主に関東の寺院を中心とした資料所蔵機関における実地踏査が実現できなかった。本研究の主軸として想定していた実地踏査が実施できなかったことは、研究の進展を困難にさせている。これにより、2022年度までの補助事業期間延長承認申請を行い、承認された。 2021年度は、既に刊行された翻刻資料や影印を使用する等して、テクストの確認作業を急いだ。
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Strategy for Future Research Activity |
資料所蔵機関である主に関東方面の寺院の許可を得次第、現地に赴いて児灌頂伝本の書承の流れに関する調査研究を行い、2021年度に実現できなかった研究のリカバーをはかる予定である。 また、近郊の関西圏の寺院については、既に撮影(影印作成)の許可を得ており、夏休み中に訪問して調査・刷会を行うことを予定している。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルス感染拡大の影響で、関東方面の寺院への調査出張が実現できなかったため、旅費として想定していた分の次年度使用額が生じている。2022年度内に旅費として使用する予定である。
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