2021 Fiscal Year Research-status Report
芥川龍之介・菊池寛共訳『アリス物語』・『ピーターパン』に関する基礎的研究
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19K13080
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Research Institution | Ryukoku University |
Principal Investigator |
澤西 祐典 龍谷大学, 国際学部, 講師 (30771133)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 日本近代文学 / 比較文学 / 芥川龍之介 / 不思議の国のアリス / 小学生全集 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、昨年度に引き続き、新型コロナウイルス蔓延により緊急事態宣言発令などにより、予定していた研究計画が遂行できない事態が重なった。そのなかで、調査対象を菊池寛・芥川龍之介共訳『アリス物語』『ピーターパン』からさらに広げ、両作が含まれている『小学生全集』に広げて研究を行った。『小学生全集』に含まれている海外文学には、芥川が好んだ作家・作品も多く含まれ、これまで先行研究で取りあげられることが少なかった作家との接点について、これまでと異なる観点から注目することとなった。 特に芥川の旧蔵書には確認できないメーテルリンク『青い鳥』(『小学生全集』第75巻)については、次のような事実が明らかになり、第二回ベルギー学シンポジウムにて口頭発表を行った。芥川が読んだと目される英訳と『小学生全集』の底本として使われた英訳は訳者が同一(Alexander Teixeira De Mattos)であり、芥川のメーテルリンク受容時期についてもこれまで『芥川龍之介全集 第十七巻』(岩波書店、1997、2008改版)で1912年4月13日付けと推測されて掲載された山本喜誉司宛て書簡の年代に誤りがある可能性がでてきた。同書簡は、これまで山本喜誉司に宛てへの芥川の「同性愛的恋愛を吐露した便り」(関口安義「注解」、同全集)と理解されてきたため、この時代の齟齬は作家像の更新に小さくない影響を与える。 また、研究開始時の研究の概要で「この二作を一般読者が親しめる形で普及したい」として述べた「アリス物語」の出版計画について、コロナ禍が遠因となり、刊行予定時期が遅れているが2022年度内の刊行を目指して、出版計画が進んでいる。刊行に際しては、菊池・芥川共訳の特徴などを注釈や解説で、わかりやすく示す予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
昨年度に引き続き、コロナ禍による出張の制限や通常業務とは異なるイレギュラーな業務の発生など、当初の計画では予想できなかった事態が重なり、当初の計画通りに研究が進まなかった。昨年度の経験から当該年度の計画の軌道修正を図っていたが、さらなる不測の事態が起こり、数か月にわたって研究計画(の一部)を遂行できない事態に陥った。 研究課題を『小学生全集』全体に広げたことで、新たな知見を得た一方で、当初の研究課題である『アリス物語』『ピーターパン』について、研究活動を通して得た知見をまとめる機会を逸してしまった。やや遅れているが、2022年度内に学術論文および図書として成果を発表できる予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究成果をまとめ、『アリス物語』ならびに『ピーターパン』について、年度内発行予定のの査読付き論文誌に投稿する予定である。また、昨年度内に行った学会での口頭発表に基づく論文を完成させ、2023年度刊行予定の共著へ寄稿する。また、菊池・芥川共訳『アリス物語』について、脱文・誤訳などを補い(その旨を注釈を施し)、2023年3月に刊行し、「あとがき」や注釈などを通して、研究成果をひろく一般に公開する予定である。
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Causes of Carryover |
コロナ禍による不測の事態が発生し、当初計画通りに研究活動を行えなかったため、次年度使用額が発生した。次年度においては、これまでの研究成果のデータを整理するスタッフ雇用に関する人件費の支出、および研究成果の活字としての報告を行えるよう支出を行う。また国際共同の可能性についてさぐる。
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Research Products
(1 results)