2020 Fiscal Year Research-status Report
『四六文章図』研究ー日本中世から近世における駢体の「読み書き」をめぐってー
Project/Area Number |
19K13090
|
Research Institution | Otani University |
Principal Investigator |
上原 尉暢 大谷大学, 文学部, 研究員 (50292181)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 四六文章図 / 駢文 / 漢詩文作法書 / 五山文学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、前年度に引き続き、『四六文章図』の訳注作業と、その日本漢文学史及び日中漢籍史上の位置づけについての分析を進めた。本年度の研究成果としては、予定していた巻二「儒家四六并文之類」以降の訳注作業を進展させたことがまず上げられる。ただその際、江戸期までの日中の漢詩文作法に関連する既存書に加えて、本書が日本に伝来していたと思われる『古今韻會擧要』・『助語辭』といった辞書の類いに当たる漢字漢語研究書などとも深く関連することが新たに明確になってきた。そこでそうした書物との関連にも視野を広げ、前年までに行った序・巻一部分も含めた訳注のさらなる検討を進めている。 もう一つの成果としては、上記の訳注作業を通した成果として、2020年度3月26日にオンラインで開催された漢代楚辞文学研究会に於いて、「江戸修辞学史上における『四六文章図』――江戸期の日中漢詩文文作法書・漢字漢語研究書との比較を通して――」という発表を行ったことである。本発表では特に江戸期に舶来した漢詩文作法書と辞書類との比較を通して、『四六文章図』という書物の成立に際して、それらの先行資料がどのように利用されているかについて検討・分析した結果を発表した。その際、参加者である東北学院大学塚本晋也氏、東北大学矢田尚子氏・武庫川女子大学狩野雄氏との質疑応答を通して今後の研究に資する意見を得た。 本研究に関する関連する学会は新型コロナ感染症流行により中止になったものが多かったが、2020年10月10日・11日日本中国学会をオンラインで参加して貴重な知見を得た。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
訳注作業については、『四六文章図』序・巻一部分については前年度に行ったが、巻二・三の検討の際に発見した関連資料との広がりもあって、再検討を行っている。また本年度は、新型コロナ感染症流行の影響で、当初予定していた海外への調査ができなくなり、また国内に於いても資料を保存する研究機関や図書館の利用ができない期間があったため、予定していた漢詩文作法書のデータベース構築の作業を行えなかった。また非常勤先である各大学においてそれぞれ異なる授業形態の変化が求められ、その対応・準備に追われることに時間を取られ、予定していた各種作業に大いに支障を来した。
|
Strategy for Future Research Activity |
三年目に当たる令和三年度は、訳注作業については引き続き分析・検討を行うともに、その成果を訳注稿として発表することを目指している。しかし現時点で頁数が多数になっており、紙幅制限のある通常の学術雑誌にはなじまないと思われるので、電子媒体もしくは成果報告書という形の発行を検討しているところである。 また海外への調査は令和三年度も難しいが、可能であれば中国・台湾に渡航し、各地の大学機関・図書館等で調査を実施したい。また国内外の公文書館・図書館などで公開されているオンラインサービスを利用し、可能な点については補助的な調査を行いたい。 さらに上記の作業を通した分析の研究成果を、国内外の学会及び学術雑誌で発表する予定である。
|