2022 Fiscal Year Research-status Report
『四六文章図』研究ー日本中世から近世における駢体の「読み書き」をめぐってー
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19K13090
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Research Institution | Otani University |
Principal Investigator |
上原 尉暢 大谷大学, 真宗総合研究所, 研究員 (50292181)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 『四六文章図』 / 『詩傳大全』 / 『蒲室集』 / 『蒲室集鈔』 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和四年度も、前年度と同様国内外で新型コロナウィルス感染拡大防止対策が実施されており、それに伴い各種研究機関を中心とした調査を主とする研究計画に大きな支障が生じた。予定していた文章指南書・作法書のより包括的なデータベース構築及びそれらとの比較における、『四六文章図』の特徴や学統の分析作業は、オンライン上で可能な作業に限られ、不足分を次年度に譲らざるをえなかった。 『四六文章図』の訳注は、前年度までの作業をブラッシュアップし、さらに巻五「禪家四六并偈頌類」についての作業を一通り終えた。 本年度は、前年度までの訳注作業中に判明した、鎌倉から室町・江戸期に日本に舶来した字書・漢字漢語研究書類や作文指南書との比較研究をより一層進めた。これまでの研究では、『四六文章図』の成立に関して、五山文学期から江戸期までよく読まれた作詩理論書や唐詩選集との関連が顕著であることを発見していたが、本年度の検討では、新たに明・胡廣『詩傳大全』という、宋元の詩経学成果をまとめた解説書との関係が顕著であることが明らかになり、その具体的な比較研究に着手した。さらに巻五は禅門における四六文に関する記述であり、その成立については、元僧・笑隠大キン[言+斤]が規範化し、日本の五山文学でも広く浸透していた所謂「蒲室疏法」が基礎になっていることが予想される。そこで笑隠の『蒲室集』や、日本の禅林における『蒲室集』の注釈書である月舟壽桂『蒲室集抄』・『蒲根』などとの比較検討を開始した。その成果の一部を、令和四年九月二日及び令和五年三月二十日に、東北大学矢田尚子教授の主催する「漢代楚辞作品の多角的研究」の研究会で紹介し、そこで得た各種の問題点を次年度の成果発表に向けてフィードバックしているところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
『四六文章図』の訳注作業は、当初巻五まで進め、全体を完成させる予定であったのだが、今期の検討において他の禅四六関連書とのの関連が新たな課題として浮かび上がり、その比較検討に多くの時間を割くことになり、まだ完成段階にまで至っていない。 また本年度は前年度までの積み残しとして、主として国外、即ち中国・台湾・韓国などの研究機関に赴き、『四六文章図』に関連する文章指南書・作法書の実態調査を行うとしていた。これも当地及び当地の研究機関において新型コロナウィルス感染拡大防止対策が引き続き実施されていたため、この計画が実現できなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
令和五年度は、前年度に引き続き、『四六文章図』の訳注作業を遂行するとともに、禅四六文関連書との比較検討を行い、一部不十分な点は含みながらも、当初の計画の順調な遂行を目指す。 訳注は量が膨大になるため、最終報告書の形で公開する予定である。『四六文章図』と他の関連書との比較研究については、令和五年度中に学術雑誌への投稿や、国内学会における口頭発表、という形で公開する予定である。
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Causes of Carryover |
令和四年度は、十月に開催された日本中国学会に参加し、そこで研究発表や研究者との交流を通して、本研究に関連する知見を拡充することができた。ただ前年度までの積み残しにしていた海外への調査は、当年も新型コロナウィルス感染拡大防止対策のため海外への渡航は躊躇せざるをえなかった。以上の理由により、当該年度の実支出額は当初の計上額より下回る結果となった。 次年度は、可能であれば、前年度からの積み残しになっていた海外調査、対面の国内学会への参加を予定している。その旅費として、令和四年度の積み残し分を充てる。
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