2020 Fiscal Year Research-status Report
アンテベラム期の活字媒体における「家庭性」の表象に関する研究
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19K13095
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
高橋 愛 岩手大学, 人文社会科学部, 准教授 (90530519)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | アメリカ / ジェンダー / 主婦 / 家庭 / 19世紀 / ミドルクラス |
Outline of Annual Research Achievements |
申請時の研究計画では、キャサリン・ビーチャーの『ドメスティック・エコノミー論』(1842)を中心にキャサリン・ビーチャーとその妹ハリエット・ビーチャー・ストウの家事・家庭生活に関する著作の分析を行うことにしていた。しかし、研究代表者の研究環境を考慮して前年度に計画に変更を加えたことに伴い、もともとは初年度(令和元年度)に実施を計画していたリディア・マリア・チャイルドによる家事アドバイスの分析を本年度に実施した。 具体的には『つましい主婦』(1828:1830年の第3版からは『アメリカのつましい主婦』)を取り上げ、その分析を行った。チャイルド自身が結婚後に余儀なくされたつましい家庭生活と『つましい主婦』で彼女が提示した家事アドバイスを検討することで、本書では金銭および時間を倹約しても実現しうる必要十分な暮らしのあり方がミドルクラスの女たちに提示されていること、質素倹約や勤勉さを通した有用性の強調という彼女の基本姿勢には前時代的なおもむきがあることを確認した。さらに、本書で示される具体的なアドバイスを通して、あるいは、同時代のミドルクラスの人々の動向に対する彼女の批判的な眼差しを反転させることによって、19世紀初めの主婦の姿と主婦の労働に支えられたミドルクラスの家庭の実像をとらえ、何ができればその主婦は「家庭的」とみなされたのかを探ることができるとの結論を得た。 研究成果は、日本アメリカ文学会東北支部例会での口頭発表で発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
海外での資料収集や研究発表を計画していたが、新型コロナウィルスの感染拡大に伴い、実施内容が大きく制限されることとなった。また、緊急事態宣言発令で遠隔授業実施の対応に追われたことで、エフォートの多くを教育活動に割かなければならなくなった。そのため、当初の計画よりも進捗が遅れていると言わざるをえない。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に研究の推進計画を変更したのに伴い、次年度(3年目)はキャサリン・ビーチャーとハリエット・ビーチャー・ストウに関する資料収集と著作の分析を中心に取り組む。また、新型コロナウィルスの感染拡大の影響で、研究対象にしている他の作家についての資料収集を計画通りに進められていないため、ビーチャー姉妹に関する研究と並行して行う。
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Causes of Carryover |
研究計画では学会参加および資料収集のための国内旅費および外国旅費を計上していたが、新型コロナウィルスの感染拡大が止まらず国内外の移動が大きく制限されたため、旅費に相当する金額が次年度使用分となった。翌年度分として請求する助成金と合わせ、学会参加および資料収集のための外国旅費として使用する計画である。なお、次年度も外国旅行の実施が不可能となる場合には、外国旅費に相当する分を設備整備費にあて、研究図書をはじめとする資料の購入に使用する。
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