2022 Fiscal Year Research-status Report
放浪する黒人男性――物語構造と人種概念を軸としたフォークナーとエリスンの比較研究
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19K13097
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Research Institution | Gakushuin University |
Principal Investigator |
桐山 大介 学習院大学, 文学部, 准教授 (60821551)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ラルフ・エリスン / ウィリアム・フォークナー / アメリカ・モダニズム小説 / アフリカン・アメリカン文学 / 物語構造 / 人種問題 / アメリカ南部 |
Outline of Annual Research Achievements |
新型コロナウィルスの影響により研究計画に支障が生じたため、2022年度はこれまでに収集した資料の分析を主とした、完成年度へ向けての準備に留まった。分析の中心はラルフ・エリスンの未完の第二長篇の草稿のうち出版されている分と、それに関連した二次資料である。とりわけ、研究の過程で新たに見出された、エリスンにとっての「故郷」としての南西部および南部、そしてその扱いに見出される葛藤というテーマから研究を進めた。 2023年度は、中断されていたアメリカ議会図書館における資料調査を遂行し、2022年度までの研究とあわせてその成果をまとめる。数十年にわたって執筆がつづけられた第二長編の草稿はその一部が出版されているにすぎず、エリスンの「故郷」というテーマをそれについての葛藤まで含めて検討するには、この作品においてエリスンがどのような書き直しを行ったのかを調査することが不可欠である。 これまでのエリスン研究では主に作家の政治的なイデオロギーや詩学のアフリカン・アメリカン性、モダニズム性が論じられてきた。特にイデオロギー的側面から論じられる場合には、それが政治的に正しいのかといった点から評価が行われてきた。エリスンの「故郷」の扱いに着目する本研究は、作家の政治性や詩学がこれまで理解されていたよりもはるかに複雑な側面を備えていることを明らかにする。また、エリスンにおける南部は従来ほとんど注目されてこなかったが、そこに光を投げかけることによって、本研究の主眼であるフォークナーとの類似点と差異もより明確になるだろう。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
新型コロナウィルス流行の影響により。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度は、中断されていたアメリカ議会図書館における資料収集を完遂する。特にラルフ・エリスンの未完の第二長篇の草稿のうちの未出版分を集めて分析し、エリスンがこの作品において南部や南西部をどのように扱おうとしたか、またそれが数十年に及ぶ執筆期間の中でどのように変化したかを明らかにし、これまでの研究成果と照らし合わせながら論文にまとめる。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルス流行の影響により。 2023年度は、主にアメリカ議会図書館における資料調査と文献の購入費に予算を使用する。
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