2019 Fiscal Year Research-status Report
The Repertory of the King's Men and Relationships among Boy Actors
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19K13098
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
木村 明日香 中央大学, 文学部, 助教 (70807130)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | シェイクスピア / イギリス・ルネサンス演劇 / ジェンダー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では国王一座のレパートリーについて、少年俳優同士の疑似兄弟関係、上下関係、ライバル関係などが女性表象にどう表れているかを明らかにする。2019年度は1本の口頭発表と2本の論文発表を行った。10月5日・6日に開催された第58回シェイクスピア学会では「『オセロー』4幕3場におけるsingingとunpinning」と題した口頭発表を行った。『オセロー』における音楽の字義的・比喩的使用に関する論考は多く、中でも4幕3場で披露される「柳の唄」はバラッド研究との関連でも取り上げられるなど注目されてきた。デズデモーナの歌が夫の愛を失った悲しみや、死の予感を暗示することも指摘されているが、本発表ではこのシーンは実のところエミリアがデズデモーナの衣服のピンを外すシーンだと主張したDenise A. Walen (2007) を継承し、singingとunpinningという二つのアクションが同時に行われる演劇的な意味を考察した。特にこのシーンを少年俳優たちの協同作業として読み直した点に本発表の画期性はある。本発表はすでに論文発表している(『紀要(言語・文学・文化)』、中央大学文学部、126号, 1-18頁、2020年)。もう一本の論文「『ハムレット』の亡霊ーー鎧とナイトガウンの演劇的役割」(『英語英米文学』中央大学英米文学会、60号、27-46頁、2020年)では、亡霊が鎧とナイトガウンを纏って登場するという大変珍しい演出を、役の掛け持ち(doubling)をめぐる議論と絡めて考察した。具体的にはE. Pearlman(2000)を敷衍し、『ハムレット』の亡霊の特異性を衣装を含めた舞台表象という観点から整理した後、Ann Thompson & Neil Taylorが提唱した役の掛け持ちパターンを念頭に、衣装の役割と意味を考察しながら、彼らの議論の妥当性を検証した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
国王一座のレパートリーを包括的に検討するという意味では、戯曲の読み込みに時間がかかっているものの、2019年度に発表した論文では本研究の意義を確認するとともに、今後の研究方針についても学ぶところが多かった。今後はスピードと精度を上げながら、進めていく。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、博士論文の出版準備を進めるかたわら、本研究を遂行していくことになる。現在、少年俳優同士の関係を切り口に有効に論じることができるのではないかと考えているのが、『じゃじゃ馬ならし』をはじめとする「殴る女」の表象である。当時の演劇には舞台上で女性が軍人などのマッチョな男性を殴りつけるという構図がしばしば見られるが、これはすなわち少年俳優が親方に相当するはずの成人俳優を殴っているということになる。要するに「じゃじゃ馬」を演じることが、少年俳優に従来の主従関係を転覆させる契機を与えているのである。2020年度はこれを含めた研究を進めていくことを目指す。
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Causes of Carryover |
購入した図書の予算申請が間に合わなかったため。
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Research Products
(3 results)