2020 Fiscal Year Research-status Report
1880年代から1920年代の英国小説における「散漫な注意」の技法
Project/Area Number |
19K13099
|
Research Institution | Tama Art University |
Principal Investigator |
中嶋 英樹 多摩美術大学, 美術学部, 講師 (70792422)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | モダニズム / 注意力 / 注意散漫 |
Outline of Annual Research Achievements |
プロジェクトの二年目となる2020年度は、感染症の関係から国外の施設を活用した海外調査が不可能となったが、現状可能なかたちで、当初の予定にしたがって、(1)注意・集中、散漫な注意といった本研究の根幹をなす概念の歴史に関する整理、および、(2)上記の整理を反映した、個別作家研究(ヴァージニア・ウルフ、フォード・マドックス・フォードなど)、という二つ軸にしたがった研究を進めた。 (1)については、感情をめぐる歴史学(感情史)に関する文献を、英語圏に限定することなく収集し、その成果の整理を進めることができた。超歴史的な要素と通時的に変化する要素をめぐる感情史のパラダイム変遷は、文学研究における認知主義、とりわけ、historical cognitismと呼ばれる流派が問題とする観点と共通点があることを確認した。また、特定の文芸形式と特定の注意のモードを関連付ける新しい専門書も入手することができた。 (2)については、ウルフに関する口頭発表の活字化を引き続き進めている。とりわけ、作中に見られる、注意の形式とジェンダーの関係という論点が、1900年前後の心理学と比較したとき、特異なものであることを示す資料を入手できたことが収穫として挙げられる。これと関連して、作中に見られる音楽の要素を論じるための文化史的な研究も複数入手し、それらの成果を反映した論考の推敲も進めた。フォードについては、上記の理由から歴史的な資料の収集は実施できていないが、新刊のもので入手可能なものについては、収集と整理を進めた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
感染症によって英国への渡航が難しいため、歴史資料の収集が当初の予定通りに進んでいないため。
|
Strategy for Future Research Activity |
海外の施設を活用した資料の収集は引き続き難しいことが見込まれるが、新刊書籍や電子ジャーナルで収集可能な資料で執筆が可能である概観論文の作業を進めること、すでに収集済の資料で執筆可能な個別作家論の作業を進めていく。
|
Causes of Carryover |
海外の施設を活用した資料の収集が難しかっため。国内にて入手可能な資料(新刊の書籍、電子版の論文、歴史的資料など)の収集に当てていく計画である。
|