2021 Fiscal Year Research-status Report
中世後期イングランドにおける地方での聖人崇敬に関する写本研究
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19K13104
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
菅野 磨美 金沢大学, 外国語教育系, 助教 (20805329)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 中世英文学 / 中英語聖人伝 / 聖人崇敬 / 典礼写本 / 聖ウィニフレッド |
Outline of Annual Research Achievements |
2年目にあたる2021年度は、初年度に引き続き、中世イングランドの地方史について書かれた二次資料などを用いて、特有な聖人崇敬が見られる地域を特定し、ノルマン・コンクエスト以降前後の教会暦と連祷のカタログを参照して、ローカルな聖人の名前を収めた典礼写本を選定した。今後も含め海外渡航の見通しが立たないため、オンラインで公開されている大英図書館所蔵の典礼写本の画像や、予備調査で収集した画像データをもとに分析を行った。 研究の成果として、ウェールズ北部の聖女で、死後イングランドとの国境を渡ってシュルーズベリーに移葬された聖ウィニフレッド崇敬に関する論文を寄稿し、来年度刊行予定である。本稿では、ウェールズ出身でありながら、死後半ば強奪されるように移葬された聖女が、シュルーズベリーの聖女となり、のち中世後期を代表する「イングランド」の聖女として崇敬されるようになった過程について、男性聖職者による聖女の身体の扱い方などジェンダーの観点に着目して論じた。また、単著出版のための準備を進め、初稿の作成に取り組んだ。本書では、未刊行の中英語聖人伝テクストを中心に扱うため、中世写本からの転写と必要に応じてその現代英語訳の作成も並行して行った。一章の一部にウィットビーの聖女ヒルダの崇敬の変遷を扱い、その際、本研究課題に挙げた手法である教会暦や連祷を収めた典礼写本を参照して論じた。また、共著による論文集の出版のため、海外の研究者や出版社にコンタクトを取り、プロポーザルを作成し提出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2021年度中に刊行された出版物はなかったものの、今後刊行される予定の論文を執筆し、また数年後の出版にむけて単著や論文集の準備が進められたため、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
海外渡航の見通しが立たず、今後の状況によっては計画通りに実行できない可能性を考え、次年度以降も国内で基礎的研究を行う方針である。幸い、研究の遂行に関して、現地に赴かないと不可能な資料はまだ出てきていないため、これまでに収集したデータや、必要ならば大学図書館のイメージング・サービス等を利用して研究を行いたい。また、4か年計画の本研究課題も後半に入るので、論文や単著の出版のための執筆により多くの時間を割く予定である。
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Causes of Carryover |
世界規模のパンデミックの影響で、国内外を移動することが出来ず、旅費として計上した額が大きく余ってしまった。海外の図書館での中世写本の調査が出来なかったことに加え、国内外問わず、学会参加のために計上した旅費も、開催がオンラインとなり、使用する必要がなくなったことも理由に挙げられる。次年度以降は、状況を見て、海外に渡航できるか判断をしたいが、国内での基礎的研究や論文執筆のために、図書の購入や、中世写本のデータの取り寄せなどに予算を当てたいと考えている。
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