2023 Fiscal Year Research-status Report
中世後期イングランドにおける地方での聖人崇敬に関する写本研究
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19K13104
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
菅野 磨美 金沢大学, 外国語教育系, 准教授 (20805329)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 聖エドブルガ / ラテン語 |
Outline of Annual Research Achievements |
2023年度前半は、ウィンチェスターのエドブルガに焦点を当て、ラテン語・中英語による聖人伝と関連文書を基に、ウィンチェスターやその他の移葬地における聖女の崇敬について考察した。後半は、エドブルガ伝を含む4人の聖女伝の論考をまとめた。 研究の成果として、6月に開催された日本西洋中世学会で、2022年度に調査したオクスフォードのフリデスウィデ伝について自由論題報告を行った。この発表では、フリデスウィデ伝の中英語テクストに焦点を当て、現在では失われてしまったもののかつて中英語のフリデスウィデ伝が収められていたと考えられる一写本に着目し、この写本に収めされた他の教化文学との関連から、聖人伝で描かれる誘惑という主題や、フリデスウィデ伝における誘惑の特異性について論じた。 また、ミンスター・イン・サネットのミルドレッド伝や、本研究課題で扱っているその他の女子修道院長伝に関連して、12世紀イングランドの女子修道院の奇跡について記したRievaulxのAelredによるラテン語のテクスト(De sanctimoniali de Wattun)に関する記事をオンライン版Palgrave Encyclopedia of Women's Writing in the Global Middle Agesに寄稿した。 3月には、ベルギー・ゲント大学の古典文学の教授をコメンテーターとして招いたセミナーで、古典期の聖女伝の1グループである異性装の聖女伝が、中世から近世にかけて、どのように英文学作品に継承されたかについて発表をした。 また、本研究課題を進める中で新たに関心を持ったイースト・アングリアの聖人伝について、予備調査を行った。literature reviewとして、先行研究に関する書評を寄稿し、2025年度以降の成果報告に向けて、複数のミーティングやワークショップを通して共同研究を開始した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初、最終年度となる予定の2023年度中に、本研究課題で焦点を当てたすべての聖人伝の論考をまとめる予定だったが、3月までに原稿を仕上げることが出来なかった。研究費が余ったことから、研究課題を延長することにし、論考は2024年度前半には仕上げる予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度となる2024年度は、2023年度に仕上げる予定だった論考をまとめる予定である。また、研究の総仕上げとして、イギリス国内の大学図書館や国立図書館で、中世写本の画像や、二次文献の収集をしたい。 同時に、本研究課題を進める中で新たに関心を持った、イースト・アングリア地方の聖人崇敬について、15世紀のOsbern Bokenhamによる『黄金伝説』に焦点を当てた調査を行う。2024年度は、国内学会でのポスター発表を予定しているため、そこで報告を行い、また、聖人崇敬について学際的に検討するシンポジウム企画が国内学会で受理されたため、2025年度以降の成果報告を目指して、2024年度は、ワークショップやセミナー等で共同研究を進める予定である。
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Causes of Carryover |
2023年度中に海外渡航が出来なかったため、次年度使用額が生じ、また研究課題を延長することになった。2024年度は、10日から2週間程度の渡航を計画し、イギリスの国立図書館・大学図書館で文献調査をするつもりである。また円安の影響で割高になっている洋書の購入にあて予算を執行する。
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