2022 Fiscal Year Annual Research Report
Neoliberal Melodrama of Nurturing Fathers in the U.S.
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19K13108
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Research Institution | Ferris University |
Principal Investigator |
関口 洋平 フェリス女学院大学, 文学部, 助教 (00837255)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 新自由主義 / 男性学 / ジェンダー / イクメン / メロドラマ |
Outline of Annual Research Achievements |
本科研費を使用して進めてきた研究の内容は、主として2023年4月に刊行された単著『「イクメン」を疑え!』(集英社新書)において公開した。本書はアメリカ研究者のみならず広い一般読者を対象に執筆した本であり、「男性の育児」が大きな社会問題となっているいま、その意義は非常に大きいと思われる。 本書では主に日米における「男性の育児」が新自由主義の政策や文化と関連付けて論じられている。「男性の育児」を扱った文化作品は日本でもアメリカでも多いが、その大部分は母親の立場を無視して父親の「苦しみ」に焦点をあてたものである。また、「父親の育児」をめぐる言説に潜んでいるのは「育児は仕事にも役立つ」という前提であり、育児を一種の人的資本とみなすそのような前提は、一部の特権的なホワイトカラーの労働者にしか通用しない幻想である。本書では雑誌や映画、小説やビジネス書など多様な文化作品を例に用いながら、「男性の育児」というイメージの裏にそうした偏った男性像が存在していることを論じ、「イクメン」という虚像が結局のところジェンダー平等にはつながっていない現状を明らかにした。また、特に映画の分析においては「メロドラマ」というモードに注目しながら以上のことを論じた。 最終年度は特に、近年人文学のなかで注目されている「ケアの倫理学」に注目し、以上のような新自由主義的な価値観に抗う可能性を持つ「男性の育児」を日米の小説のなかに見出した。結果として、新自由主義というイデオロギーが「ケア」という概念とは真っ向から対立し、「ケア」を骨抜きにすることによって新自由主義がその力を維持していることを確認した。
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Research Products
(3 results)