2020 Fiscal Year Research-status Report
環大西洋会衆派ネットワークにおけるEdward Taylorの詩と思想
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19K13114
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
皆川 祐太 上智大学, 文学研究科, 研究員 (60823333)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | アメリカ文学 / 思想史 / ピューリタニズム / 環大西洋 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は環大西洋を複雑に行き来する、人的そして思想的ネットワークがEdward Taylorの初期の思想を形成したプロセスを明らかにすることである。現地のアーカイブスや図書館でのリサーチが不可欠であるが、コロナウイルスの世界的な蔓延により在外研究を一度もすることが出来なかった。そのため、研究の実績を十分上げることはできなかった。ただ、出版されている資料の分析を2019年度に行った在外研究の成果を元に行うことはできた。
2020年度は、Taylorがハーバード大学に在籍していた頃に書いた試作品について考察をした。特に、"My Last Declamation in the Colledge Hall May5, 1671"という、Taylorが大学において演説した詩を、2019年度の在外研究で得た成果と照らし合わせることで、分析した。Taylorは英国国教会を内部から改革させようとする非分離派と呼ばれるピューリタンの一派であるので、英国国教会を批判しつつも一切の関わりを否定した訳ではない。よって、彼はナショナル・アイデンティティとしてアメリカ大陸に存在していても、英国人としての意識を持っていたはずである。確かに、この詩の冒頭を読むと、Taylorは「自分は英国人である」と主張しているので、英国人としてのナショナル・アイデンティティを強調しているように見える。だが、この英国人というナショナルなアイデンティが、直接的に英国への帰属意識を象徴している訳ではないのである。むしろ、ハーバード大学に所属していることの隠喩であるのだ。つまり、Taylorにとって英国人であることは、ハーバード大学に属していることであり、英国という国に属していることではないのである。大学はコスモポリタンな知的伝統を引き継ぐ機関であるので、彼はナショナルという枠組みを超えたところにある、コスモポリタンなアイデンティティを持っていたといえるだろう。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
コロナウイルスの世界的蔓延のため、在外研究が出来なかったから。また、研究拠点としている上智大学の図書館での研究も、大学側が図書館の利用を制限していたため、行えなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
在外研究をすることができるかどうかが重要になってくるが、未だ状況は厳しく、在外研究をすることが出来ない可能性が高い。そのため、これまで集めてきた資料を基に、出来る範囲で研究成果を発表することを考えている。
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Causes of Carryover |
在外研究が出来なかったため、差額が生じてしまった。在外研究を行うことで使用する計画である。
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Research Products
(1 results)