2019 Fiscal Year Research-status Report
ジャズと文学:日米文学研究とインプロヴィゼーション・スタディーズの視点から
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19K13115
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
佐久間 由梨 (辻由梨) 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 准教授 (90712646)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ジャズ / 即興 / Toni Morrison / Kamasi Washington / Frances Watkins Harper |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度は、ジャズおよび即興をめぐる2回の研究発表をし、3本の研究論文を執筆した。 春学期中は、ハーレム・ルネサンス期の女性詩人Carrie Williams Cliffordの詩集および黒人女性として初めてノーベル文学賞を受賞したToni MorrisonのJazz (1992)を精読し、これらの作品におけるジャズが、人種暴力に対する怒りや悲しみという感情を秘める地場となっていることを示した。本研究成果の一部を、トニ・モリスンの追悼号である『ユリイカ―特集トニ・モリスン』に発表する機会をいただいた。加えて、ハワイにて開催されたAmerican Studies Associationの年次大会にて発表した。 秋学期中は、2010年代以降のジャズの動向を探るために、ジャズ・サックス奏者であるカマシ・ワシントンをめぐる調査を進めた。この成果を立教大学アメリカ研究所のシンポジウムにて発表する機会をいただいた。発表内容を元にした論考を『立教アメリカン・スタディーズ』42号に掲載予定である。 カマシ・ワシントンをめぐる研究と並行する形で、19世紀を代表する黒人女性作家・演説家であるFrances Watkins Harperの小説および講演を、即興という視座から分析した。即興的なCall and Responseを利用するHarperの講演が、人種やジェンダーの垣根をこえた連帯を即興的に生み出し、反奴隷制および反人種差別という世論を生み出す場となっている可能性について指摘した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
文学作品の精読作業に、予想以上に時間がかかっているが、おおむね順調に進捗している。2019年度は、アフリカ系アメリカ人女性作家(Toni Morrison, Carrie Williams Clifford, Frances Watkins Harper)の文学作品を重点的に調査し、その過程において、ジェンダーやフェミニズムの観点から、ジャズおよび即興を再考することの意義が、以前よりもはっきりと見えるようになった。
進捗が計画より遅れているのは、即興研究をめぐる研究書の精査である。関連書籍の調査は完了したものの、それらの読解については遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の調査範囲は、19世紀から21世紀までと幅広い。したがって、今後もジャズと即興に関する文学作品の精査を続ける予定である。2020年度は特に、これまで調査が進んでこなかった1960年代の公民権運動期およびブラック・アーツ・ムーヴメント期の作品を重点的に読んでいく予定である。それに伴い、同時期のハード・バップ、フリー・ジャズ(アバンギャルド)、1980年代以降のネオクラシシズムを中心とするジャズの潮流についても調査を進めていきたい。
2020年度の目標は、ジャズが社会・政治運動と明確に結びついていた1920年代のハーレム・ルネサンス、1960年代のブラック・アーツ・ムーヴメント、2010年代以降のブラック・ライヴス・マターの各時代における、文学およびジャズの特色について整理し、理解を深めることである。
また、2020年度は新型コロナウイルスに伴い、国内外での学会参加が難しくなることが予想されるため、発表よりもむしろ、文学作品の精読と論文執筆に向けた研究活動を続けていきたい。もし状況が許すようであれば、American Studies AssociationおよびModern Language Associationの国際大会に参加したい。
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Causes of Carryover |
英語論文の校正(2本)のために人件費として計上したものの、英語論文を1本しか執筆できなかったため、次年度使用額が生じた。次年度に、英語論文を完成させ、英文校正費として使用する予定である。
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Research Products
(4 results)