2019 Fiscal Year Research-status Report
Eliza Meteyard, the Nineteenth Century British Woman Journalist and Early Investigative Writer
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19K13116
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
閑田 朋子 日本大学, 文理学部, 教授 (40328654)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 19世紀英文学 / イライザ・ミーティヤード / ジャーナリズム / 女性ジャーナリスト / 大衆向上雑誌 / 社会問題小説 |
Outline of Annual Research Achievements |
英国19世紀中頃に活躍した初期取材・調査型女性ジャーナリスト、イライザ・ミーティヤードについて研究を進めるにあたり本年度は、彼女が1840年代末から50年代にかけて寄稿した雑誌記事や連載小説に焦点を当てた。ミーティヤードはもともと政治・社会問題を扱う急進的ジャーナリストであったが、1840年代中頃に主な寄稿先であった「大衆向上雑誌」(大衆の知的・社会的向上を目指した雑誌ジャンル)全般の売り上げが伸びず、次々と廃刊になった後で、意に反して生活のために娯楽誌に寄稿せざるを得なくなった。それでも1840年代終盤から50年代初めにかけては、『イライザ・クック・マガジン』や『労働者の友』、『貧民学校ユニオン・マガジン』などに社会派の記事・小説を載せていたが、様々な社会問題を広く扱った「大衆向上雑誌」寄稿時と違って、同じ社会問題を扱うにしても雑誌に合わせてテーマも書き方も変えている。そして50年代半ばにもなると、急進性を矯める傾向が強まる。さらに『レディのおとも』や『レディの小箱』といった淑女向け雑誌に軽い読み物を書いたり、以前の記事や連載小説を使いまわしたりするようになる。当時は、女性の図書館の使用が制限されていたり、中産階級の独身女性が一対一で男性と話をすることがタブーであったりと、資料を閲覧するにもインタービューを行うにも、女性ジャーナリストにとって著しく不利な社会であった。そのような状況において、社会の向上のために役に立ちたいという高邁な理想を持ちながらも、彼女にはもはや、それぞれの社会問題についてじっくりと取材や調査をする十分な時間が無かった。不利な状況と生活苦のなかで理想を曲げて生きていかざるを得ないミーティヤードのあり方を考察することは、19世紀英国の女性ジャーナリスト全般のあり方を知る上でも、また現代社会のジェンダーについての問題を鑑みる上でも有益であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
年内の校務多忙のため、主に年明け後の期間を集中して研究にあてる予定であったが、その時期に新型コロナウィルスが蔓延し、資料を集めるために計画していた渡英が不可能になった。イギリスから、複写等が可能なものだけでも資料を取り寄せようとしたが、先方の大学図書館が同じ理由のため、次々に業務を停止し、これもできなくなった。また、新型コロナウィルスに対応するための様々な校務を急ぎでこなさなくてはならず、イライザ・ミーティヤードの著作についての同時代の評価に関する資料(書評その他)を集めるには至らなかった。しかしながら1850年代のミィーティヤードの著作自体はほぼ収集し終わり、これは今後の研究を進める上でも有益であった。
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Strategy for Future Research Activity |
令和2年度は前年度の研究計画の遅れを取り戻すと同時に、英国1860年代におけるイライザ・ミィーティヤードのジャーナリストとしての執筆活動について、彼女の寄稿先の雑誌の特徴を視野に入れて、研究を進める。また、特にミーティヤードの代表作である『ジョサイア・ウエッジウッドの人生』に焦点を置き、その出版に至る彼女の知的・社会的活動の経緯及び人脈、本書の内容、そして出版によって生じた彼女の社会的立場の変化に目を向ける。
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Causes of Carryover |
資料を集めるために渡英する予定だったが、新型コロナウィルスのため出張をキャンセルすることになり、当該年度分の助成金すべてを使用することができなかった。次年度には、コロナウィルスがおさまった時期に、本年度分の予定も含めて出張期間を延長し、大英図書館やケンブリッジ大学図書館等を訪問して必要な資料を集めたい。なお、状況によって出張が依然として難しい場合は、これらイギリスの図書館に資料の複製・郵送・デジタル化などについて、相談する予定である。
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Research Products
(2 results)