2022 Fiscal Year Research-status Report
Eliza Meteyard, the Nineteenth Century British Woman Journalist and Early Investigative Writer
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19K13116
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
閑田 朋子 日本大学, 文理学部, 教授 (40328654)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | イライザ・ミーティヤード / ジョサイア・ウエッジウッド / ハリエット・マーティノー / ヴィクトリア朝 / 出版文化 / ジャーナリズム / ユニテリアン |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度は、英国の初期取材・調査型女性ジャーナリスト、イライザ・ミーティヤード(1816-79)の代表作である『ジョサイア・ウエッジウッドの生涯』(1865-66)について、研究を行った。陶器で有名なウエッジウッド社の創立者であるジョサイア・ウエッジウッド(1730-95)が生きた時代に、彼のような大工業(工場制機械工業)の実業家の人生を記録する意義は、明確には意識されていなかった。しかしながら、死後約70年を経て、彼の人生は、ミーティヤードによって、「大工業の英雄」として、伝記に残されることになる。本研究では、ある人物の人生を伝記を残すに値すると考える社会の評価基準に注目しつつ、ミーティヤードが、ウエッジウッドを貧しく無学な家庭出身の人物であったという偏見を覆すために、様々な資料を駆使して、伝記文学というよりはむしろ現代の研究書に近い形をとって、「大工業の英雄」像を描いたことを明らかにした。 また、当該年度は研究に広がりを持たせ、19世紀の出版文化を象徴する著作家と言えるハリエット・マーティノー(1802-76)とミーティヤードを比較することで、同時期ジャーナリズム業界におけるユニテリアンの出版者と著者等の知識人仲間のネットワーク及び読者との関係性を読み解こうと試みた。マーティノーは、ミーティヤードと同じく、ユニテリアンの精神土壌において進歩的な知性を育んだ女性ジャーナリストである。1840年代後半から50年代初頭にかけて、2人は同じ複数の雑誌に寄稿し、知識人サークルにおける共通の知人も多かったが、その後、2人が著作物を発表・出版するあり方は、大きな違いを見せるようになった。この2人の作家の寄稿先を比較することで、ユニテリアンの人的ネットワークと雑誌の関係性について考察を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
前年度に続き、新型コロナウイルス対策のため、資料収集を目的とした自由な渡英ができなかった。本研究は、オリジナリティを重視した研究であり、ミーティヤードは現在に至るまでほとんど知られていないジャーナリストである。そのため二次資料のみで十分な研究をすることは、不可能であったが、近年はオンライン上の多くの一次資料が載せられているため、それを最大限に利用して研究を進めた。 また、コロナ禍における教育の質保証を目的として、ICT(情報通信技術)を基盤とした国際連携と領域横断的教授法開発に関する研究を国内外の研究者と協力して進めるなどの作業に予想以上の時間がかかり、前年度の遅れを取り返すことが難しい状況にあった。しかしながら、この活動を通して知り合った海外研究者と、インターディシプリナリーなあり方で、ヴィクトリア朝の出版状況について情報交換をするなどしたため、この教育活動は間接的にではあるが、本研究に役立っていると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
当該年度に日本ヴィクトリア朝文化研究学会全国大会、および欧米言語文化学会で行った研究発表をそれぞれ論文としてまとめる。その際に、19世紀英国出版文化におけるユニテリアンの人的ネットワークと雑誌の関係性をミーティヤードを中心として考察することを優先させ、可能であれば『ジョサイア・ウエッジウッドの生涯』におけるウエッジウッド像に関する研究を進めたい。 また、本研究の最終年度としてミーティヤードの著作物一覧を一旦、完成させ、特に彼女の1840年代から50年代初めの著作活動については総括的にまとめ、その上で、研究がいまだ十分とは言えない彼女の1850年代・60年代の活動について調査・研究を進める予定である。
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Causes of Carryover |
資料を集めたり、関連分野研究者と情報交換をしたりするために渡英する予定だったが、新型コロナウイルスのため、海外出張がかなわず、当該年度分の助成金すべてを使用することができなかった。渡航費用が値上がりし、残額で旅費を賄うことができないため、次年度に図書購入の費用に充てるなどして、研究の推進に役立てたい。
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Research Products
(2 results)