2022 Fiscal Year Annual Research Report
19世紀末から20世紀前半の英国ユートピア文学・思想と人類学言説
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19K13118
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
小澤 央 明治大学, 商学部, 専任准教授 (80838128)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ユートピア / ディストピア / 人類学 / 他者 / アイデンティティ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究はユートピア文学・思想と人類学言説の関係を明らかにするものである。期間延長による最終年度である2022年度は、これまでの研究の集大成として、19世紀末から20世紀中期のユートピア作品を概観するとともに、その人類学的関心がその後のユートピア作品にどのように引き継がれたのかを検討した。人類学の最近の動向との比較も行った。 研究成果として、10月8日にThe International Association for the Fantastic in the Artsの開催する国際会議First Virtual International Conference on the Fantastic in the Artsにおいて、“Anthropology and Utopian Literature before and after Brave New World”という発表を行った。ここでは、ユートピア文学に登場する、異文化の「他者」との関係構築に取り組む(疑似)人類学者の表象に注目している。参加者のレスポンスを受け、また自身でも考察を重ね、一部を論文に仕上げた。この論文は、2023年または2024年刊行予定のAlice Cheylan and Alain Morello編集による国際共著Special Edition of Babel Transverses - Aldous Huxley(正式タイトル未定)に収録される(採用済)。 期間全体にわたる研究により明らかとなったのは、19世紀末から20世紀前半のユートピア作品にとって、異文化や他者を記録する人類学が、その想像の源泉、刺激として大きな役割を果たしていたことに加え、ユートピア作品が人類学に対して、異文化を理解、記述することの難しさや、他者とともに学び生きることの大切さを説くなどの提言を行っていたということである。そのなかには、20世紀後半のEdward W. SaidやJames Cliffordによる人類学批評を先取りするものや、21世紀のTim Ingoldの人類学観、人間観と共鳴するものも含まれている。本研究は、ユートピア作品(特に文学)と人類学言説の関係を具体的に検討し、その成果を国際的な会議、著書、雑誌を通して発表できた点で意義があった。
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Remarks |
Matthew Leggatt編集により、State University of New York Pressから2024年に刊行される予定のWastelands and Wonderlands: Essays on Utopian and Dystopian Fictionsに、ユートピア文学と帝国主義の関係についての章を執筆する(要約採用済)。ここにも本研究の成果が活かされることとなる。
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