2020 Fiscal Year Research-status Report
The Temporality of Social Criticism: Nostalgia and Its Paradox in Dystopian Fiction and Science Fiction
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19K13119
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
中村 麻美 立教大学, 文学部, 助教 (80827709)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ディストピア / フェミニスト・ディストピア / ノスタルジア / カズオ・イシグロ / ジョージ・オーウェル / クィア理論 / フェミニズム |
Outline of Annual Research Achievements |
・Kazuo Ishiguroの_Never Let Me Go_(2005)におけるノスタルジアを、日本で放映されたドラマ版(2016)の分析も組み込みながら議論した論文を_Science Fiction Studies_に発表した。博士論文のチャプターでは論じられていなかった内容(クィア理論からの知見など)を追加したことで、博論のチャプターを大幅に拡充・アップデートすることができ、またノスタルジアをより多角的に考察する契機となった。 ・2019年度に出版した論文(「ジョージ・オーウェル『一九八四年』とナオミ・オルダーマン『パワー』におけるレイプ文化の読解」)を『一九八四年』の議論に絞り再構成した論文(「家父長制批判としての『一九八四年』?」)が含まれた共著書籍が2021年5月に出版される予定である。 ・主要オーガナイザーの一人として企画していたが、延期となっていた国際シンポジウム(“Feminist/Queer Utopias & Dystopias--Alternative Worlds Imagined Through Non-Normative Desires and Bodies”。使用言語は英語)を、コロナ禍に鑑みオンラインで開催した。日曜早朝にもかかわらず、200人を超える出席者が集まり活発な議論が行われ、シンポジウムの後も国内外の研究者からフィードバックを得ることができた。私自身は英TVドラマ_Black Mirror_の"San Junipero"におけるクィア・ノスタルジアについて、過去の商品化や障害者表象の問題も分析しながら議論し、ノスタルジアとトラウマの関係性を探った。 ・ポストヒューマン研究で知られているRosi Braidottiのサマースクール(オンライン)に参加した。ポストヒューマンに関する知識を深めるとともに、少人数でのチュートリアルで海外研究者らとのネットワーキングができ、貴重な機会となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2020年度にはAlasdair Grayの_Lanark_におけるノスタルジア研究の一環として、フィールド調査を計画していたが、コロナ禍のため断念し、Never Let Me Goの論文やクィア・ノスタルジア、そしてフェミニスト・ディストピアの研究にフォーカスした。 フェミニスト・ディストピアにおけるノスタルジアに関しては文献講読を継続しているが、昨年度以降まとまった研究発表が出来ていないこと等から、現在までの進捗状況は「やや遅れている」と判断した。 博士論文をベースとした英文モノグラフ出版に関しては、博論執筆時から現在に至るまでの期間で、理論構成など大きな変化があった。よって今年度発表したNever Let Me Goの論文のようにチャプターごとに再構成しながら出版していくことを検討している。
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Strategy for Future Research Activity |
コロナ禍で海外出張が困難な状況が続いていることに鑑み、日本でも遂行可能な以下の計画を立てている。 ・フェミニストSFにおけるノスタルジアを、特にメンタル・ヘルスの表象に着目しながら論じ、研究発表を行う。 ・"San Junipero"の研究発表を論文として発表する。 当初の研究計画からの変更点がいくつか出てきたが、ディストピア文学とSFにおけるノスタルジアの逆説性、というテーマ設定は一貫して継続しているので問題はないと考える。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が発生した理由は、コロナ禍により海外出張が困難であったこと、また、国際シンポジウム開催にあたりアメリカから研究者を招待したが、オンライン開催となったため旅費などの招待費用を計上する必要がなくなったことが挙げられる。 次年度は、英語校閲サービス、学会出席費用、書籍・論文とPC関連機器購入に費用を計上予定である。
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