2020 Fiscal Year Research-status Report
文学と農学をエコクリティシズムを用いて接続する:ロマン派文学における農業革命再考
Project/Area Number |
19K13125
|
Research Institution | Ryukoku University |
Principal Investigator |
佐々木 郁子 龍谷大学, 農学部, 講師 (10534125)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | エコクリティシズム / イギリス・ロマン主義 / ワーズワス / 農業革命 / 持続可能性 |
Outline of Annual Research Achievements |
イギリス・ロマン主義時代の作家で、農業への造詣が深いJohn Thelwallに焦点を当て、彼の農業観を明らかにし、Wordsworthへの影響を探る研究を行った。近年、ThelwallのWordsworthへの文学的影響力が再評価されるなか、農業観をめぐる影響関係はほとんど論じられることはない。前年度までは、Wordsworthの農業観について、当時の農業論者らの報告書を参照しながら調査してきたが、「研究の目的」に掲げているように、本研究は「ロマン派の農業観」を扱うものであるため、他の同時代作家(Thelwall)へ対象を広げていくこととした。 「研究実施計画」については、「①農業に関する歴史書や報告書から、当時の農業の特徴を調査する」と「③Wordsworthによる農業関連の描写と①を比較し、農業への見解を確認し、②とどの程度結びつくのかを検討する」の補足として、Thelwallの著作から当時の農業の実態を調査し、彼の農業観を明らかにする研究を開始した。彼の農業体験が語られる"Prefatory Memoir"(1801)や、イングランドの農村問題にふれたThe Peripatetic(1793)などの作品から、近代化に脅かされる農村への同情と冷徹な現実直視とが入り混じった態度が表されていること、さらに、教育を含む小農の待遇改善や農業改良の必要性が繰り返し説かれていることを確認し、WordsworthのThe Excursion(1814)で展開される農業観への影響を明らかにした。本研究内容は、イギリス・ロマン派学会第46回全国大会においてオンラインで発表した。また、前年度までの研究内容について執筆・投稿していた論文が、ASLE-Japan/文学・環境学会『文学と環境』第23号に掲載された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「研究の目的」に記載したイギリス・ロマン派の農業観に関する研究について、研究対象にThelwallを追加し、国内での資料収集、学会でのオンライン発表を実施した。また、前年度の投稿論文も無事に掲載された。Thelwallに関する研究では、令和3年度の学会発表も決定している。以上から、「おおむね順調に進展している」と判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
「研究実績の概要」に記載の通り、イギリス・ロマン主義時代の農業の実態やWordsworthの農業観への理解をさらに深めるため、Thelwallを研究対象に加えている。これまでの研究で両作家の農業観の類似が明らかになり、農業観をめぐる影響関係を見出すことができた。一方で、Thelwallの研究は開始したばかりで、彼の農業観と密接に関わる政治思想の理解が不十分なところもあるため、今後も当作家の農業観に関する研究を継続する。
|
Causes of Carryover |
イギリス・ロマン主義時代の農業関連文献や資料を国内外で収集する予定であったが、前年度に引き続き、移動を自粛したことや、国内学会の全国大会もオンライン開催であったことにより、旅費に次年度使用額が大幅に生じている。 COVID-19関連問題の収束により、移動が容易な状況に戻り次第、イギリスでの資料収集を開始し、国内の学会参加や資料収集に要する旅費として使用する。
|