2019 Fiscal Year Research-status Report
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19K13126
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Research Institution | Kansai Gaidai University |
Principal Investigator |
橋本 史帆 関西外国語大学, 外国語学部, 准教授 (60439502)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 密貿易 / 重婚 / 違法行為 / 帰国者 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、ハーディの長編小説と短編小説を概観し、密貿易がいかに作中に表出されているかを探った。作品を熟読していく過程で、密貿易だけでなく、重婚、殺人、詐欺などを含む犯罪行為にも目を向けて研究していくことで、作品を多角的に読み深めていくことができ、新たな作品解釈につながると気付いた。幅広い犯罪に着目して作品を読むことで、当時のイギリス民衆の価値観や文化に対する理解を深めるだけでなく、イギリスと植民地の関係性、イギリスと諸外国を往来する人々に対するイギリス人の反応を知ることができると考えた。この発見は、ハーディの長編小説『日陰者ジュード』に登場するアラベラ・ドンの分析を通じて得られたものである。彼女はイギリスとオーストラリアで別の男性と結婚する。19世紀、移住は一般的な行為であったため、重婚は民衆から身分の高い人々の間で見られた。作中の違法行為に対する反応から、その犯罪行為を軽く受け止めるか否かは、それぞれの人物の経済的・社会的状況によって異なる。また、違法行為に携わる人々が明らかにするのは、諸外国からの帰国者に対するイギリスの人々の反応である。作中の帰国者が、当時の帰国者に対するマイナスイメージを表象することもあれば、ハーディがそういった人々を異質なものとはみなさず、歓迎する見解を見せてもいる。今後研究を進めていくうえで、密輸とその他の犯罪行為を通じて作品分析することで、作品解釈の幅を広げることができると考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ハーディの作品における犯罪行為とそれに対する一般民衆の反応についての分析は進んでいる。また、ハーディの小説を読み進めていく中で、犯罪行為全般に目を向けていくことで、作品をより深く理解することができることに気付いたのは良かった。しかし、ハーディ以外の作家の作品分析がやや不十分である。したがって、次年度からは別の作家の作品研究を始め、可能であれば発表したいと考えている。また、2019年の終わりから、新型コロナウイルスが流行したため、2020年の冬に予定していたイギリスでの現地調査を諦めた。これについては、集めた図書資料とインターネットの利用で内容を補っていくつもりである。なお、2020年の夏の出張は状況を見て判断するつもりである。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、ハーディの長編1篇と短編1篇に描かれた違法行為が、いかに描かれているかについて論文にし、学会誌などに発表する。また、ディケンズ、ギャスケル、トロロープ、スコット、ブラッドンの作品を読み進めていく。そして、作中に描かれた密貿易を含めた犯罪行為と階級問題、女性問題、諸外国からの帰国者に対するイメージ、イギリスと諸外国との関係性について分析していく。これについては、最終年度に発表できるよう、準備を進めていくつもりである。
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Causes of Carryover |
2020年の2月から3月にかけて、調査のためイギリスに出かけるつもりであったが、新型コロナウイルスの流行により、調査を取りやめたためである。したがって、出張の代わりにインターネットや書籍を通じての調査に切り替えた。新型コロナウイルスの終息が不透明なため、今後、研究はインターネットと書籍を通じて進めていくつもりである。ウイルスの状況が落ち着いた時点で、現地調査するつもりである。
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Research Products
(1 results)