2021 Fiscal Year Annual Research Report
20世紀前半のイタリア芸術文化におけるアメリカへの眼差し
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19K13132
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Research Institution | Tokyo University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
小久保 真理江 東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 准教授 (00815277)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | イタリア / アメリカ / 文化 / 文学 / 20世紀 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度はイタリア未来派の芸術家であるフォルトゥナート・デペーロの作品におけるアメリカ体験の表象に関して調査・分析を行うことに重点をおいた。デペーロは1928年から1930年までと1947年から1949年まで、二度に渡ってアメリカに滞在している。このことに注目し、デペーロがアメリカでどのような経験をしたのか、そしてその経験を通して感じたことをどのように表現したのかについて調査・分析・考察を行った。デペーロは、自らのアメリカ体験を絵画やデザインの作品に反映させるのみならず、言葉で表現することも行った。特に1928年から1930年までニューヨークに二年間滞在した際の経験については多くの文章を書いた。本研究では、このニューヨーク滞在記の文章に身体に関する記述が多く登場することに注目し、アメリカの近代的大都市における人間の身体がこのテクストのなかでどのように表象されているかを詳細に分析した。2021年9月10日にはその成果を「早稲田大学イタリア言語・文化研究会第170回例会」(オンライン開催)にて口頭発表の形で発信した。その後、この口頭発表を土台にさらなる調査・分析を進めながら論文を執筆し、機関紙『総合文化研究』(第25号)に発表した。デペーロの文章表現は絵画やデザインなどの視覚芸術作品と比べると、これまでさほど注目されきておらず、研究も少ない。その意味で、デペーロの文章表現の詳細な分析を行った今年度の成果は未来派研究の分野にも新たな知見をもたらすものであると言える。また、ヨーロッパからアメリカへの移動が現在ほど容易ではなかった時代に自らの身体で実際にニューヨークという近代的大都市での生活を体験したデペーロの作品における身体描写の分析の成果は、モダニティの象徴としてのアメリカのイメージについて考える上でも重要である。
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Research Products
(2 results)