2020 Fiscal Year Research-status Report
同時代の災厄を語る オーストリア現代文学における「死者とのコミュニケーション」
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19K13137
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
福岡 麻子 東京都立大学, 人文科学研究科, 准教授 (40566999)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 災厄 / オーストリア文学 / 物語論 |
Outline of Annual Research Achievements |
プロジェクト中間年度にあたる2020年度は、新型コロナウィルス感染症拡大により、研究計画および実施内容の一部変更を余儀なくされた。とはいえ、全面的な停滞が生じたのではなく、オンライン形式の利用等により研究活動を継続させ、一定の成果を得ることができた。 1)資料的・人的研究基盤の整備継続:海外研究機関での資料収集は叶わなかったものの、メール等可能な手段により、ウィーン大学イェリネク研究所とのコンタクトを継続し、研究上の助言を得た。同研究所の国際研究パートナーを継続して務め、ウィーン大学・ウィーン音楽芸術大学によるエルフリーデ・イェリネク大学横断研究協会設立学会に、イェリネク作品の翻訳朗読ビデオを提供した。 2)ジェンダー的観点の焦点化:当初の計画通り、オーストリア文学が「過去」の災厄にどのように取り組んでいるかの考察を行った。その際、ジェンダーが災厄の体験を方向づける大きな要素の一つであるという視点を獲得した。この点は、当年度の研究成果発表(日本独文学会秋季研究発表会、2020年11月、オンライン開催)にも取り入れた。 3)新型コロナウィルス禍に対する文学の反応・発言:ドイツ語圏のさまざまな作家、文学研究者が感染症、またその拡大による社会的変化について作品発表や発言を行なっている。感染症の拡大とそれによる(ないしそれによって可視化された)社会的問題・課題は、長期間的に取り組まねばならないものであることが見込まれる。文化・地域によって焦点化される事柄も異なるため、ドイツ語圏におけるこれらの発言の一端を収集しまとめた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新型コロナウィルス感染症拡大により、研究計画および実施内容の一部変更を余儀なくされた。とはいえ、全面的な停滞が生じたのではなく、オンライン形式の利用等により研究活動を継続させ、一定の成果を得ることができた。2020年度当初は各種学会が中止となったが、年度後半にはオンライン形式で学会開催が持続されたため、成果発表を行うこともできた(書籍(分担執筆、事典記事)、研究ノート、口頭(シンポジウム)発表)。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の予定通り、ここまでの考察を踏まえ、同時代の災厄について語る文学における語りのモデルを模索する。とりわけ上述のジェンダーという観点に注目する。ジェンダーは新型コロナウィルス禍の影響の受け方を方向づけるものでもあり、日本の文学では川上未映子らがこのことを主題化している。ドイツ語圏の例も渉猟し、語りのモデルを考察する際の示唆とする。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルス感染状況の拡大により、海外渡航(海外研究機関での資料収集、人的ネットワークの形成維持、研究成果発表を目的としたもの)が不可能になったため。オンライン形式での成果発表に必要な機材の調達、オンライン研究会実施運営にかかる費用、電子型資料を含む研究資料の調達等に充てることにする。
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Research Products
(3 results)