2020 Fiscal Year Research-status Report
18/19世紀転換期ドイツ語圏文学におけるアマゾネスの表象
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19K13138
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
速水 淑子 横浜市立大学, 国際教養学部(教養学系), 准教授 (70826099)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | アマゾネス / ジェンダー / 市民社会 / 18/19世紀移行期 |
Outline of Annual Research Achievements |
第2年次にあたる本年度は、以下の2点から研究をすすめた。第一に、昨年度の成果(古代以来のアマゾネス表象史における18/19世紀アマゾネス表象の特徴の解明「野獣化し食人する女――18・19世紀移行期ドイツ語圏のアマゾネス」『思想』2020年6月号)を踏まえ、クライスト『ペンテジレア』における復讐のモチーフについて、その母娘関係に着目しつつ検討を加えた。その成果を活かし、2018年9月に発表したドイツ語拙論を増補しつつ翻訳した。研究成果は『横浜市立大学人文科学系列』 71巻3号に掲載された。第二に、アマゾネスの近接イメージとして、18/19世紀ドイツ語圏における女神像、特に女神ゲルマニアについて調査を進めた。 また、本研究の広義の目的は「市民社会」の理念が持つ排除と抑圧の契機を、その形成期に遡って明らかにし、それによって現代における「市民社会」理念の限界と可能性を考察することである。その観点から、20世紀初頭および現代の市民社会の在り方を、アーレントとマンハイム、ハーバーマスを手懸りに論じ、前者については政治思想学会(5月)で、後者については平和学会(11月)で口頭発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は、特にアマゾネスの近接イメージである「女神」および「女性君主」の表象について調査する予定であった。しかし感染症拡大により学務多忙となり、予定していたエフォート率が確保できず、文献の読み込みに遅れが生じている。またアマゾネスとその近接イメージ(女神、女性の君主等)の関係を視覚的に理解するため、欧州への調査旅行を予定していたが、感染症拡大により取止めざるをえなかった。 一方で、本研究の広義の目的である「市民社会」理念の限界と可能性の考察に関しては、予定外の学会報告を行うことができた。これらの研究を通じて、最終年度の取りまとめ時の考察を一部先取りする形となった。
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Strategy for Future Research Activity |
1)本年度に引き続き、アマゾネスの隣接イメージの調査を続ける。特に女神ゲルマニアについて文献の読み込みを行う。また、感染症拡大により実施できなかった欧州での資料収集および視覚イメージ調査を実施したい。ただしこれは感染状況により延期となる場合がある。2)次年度は最終年度にあたるため、研究成果を総括し、ナショナリズム、ジェンダー、野蛮概念の三者の関係について考察する。
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Causes of Carryover |
本年度に予定していた調査旅行を感染症拡大により延期したため次年度使用額が生じている。次年度は、感染症の動向を見極めつつ、今年度実施できなかった調査旅行を実施したい。また、必要となる書籍についても引き続き入手していきたい。
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Research Products
(5 results)