2019 Fiscal Year Research-status Report
19世紀以降の文学のアダプテーション:初見と再見に有効な語りの手法
Project/Area Number |
19K13139
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Research Institution | Kyoto City University of Arts |
Principal Investigator |
中村 翠 京都市立芸術大学, 美術学部/美術研究科, 准教授 (00706301)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | アダプテーション / 19世紀 / 小説技法 / 翻案 / 自然主義文学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の狙いは、アダプテーション(翻案)作品において、原作の物語を知らない受容者(初見)と、すでに知っている受容者(再見)の双方に対して有効な語りの手法を考察することである。翻案作品はその性質上、かならず上記の二種類の受容者を念頭に置かねばならない。したがって、初見と再見の受容者を同時にターゲットとする、アダプテーションに特有の語りの手法があると考えられる。こうした手法は、とくに小説技法が発展した19世紀以降の文学作品を他ジャンルへ翻案する際、熟考と工夫を要するはずである。こうした場合に語りの手法がどのように扱われているのかを究明する。 2019年度は本研究課題の初年度であり、当初はフランス国立図書館での資料調査や、日本フランス語フランス文学会への参加、ブルゴーニュ大学で行われた国際シンポジウムへの参加等が予定されていた。しかし前期に妊娠が確定し、後期からは産休・育休に入ったため、予定していた出張は見送ることになった。よって研究期間の延長を申請した。また年度末にはCOVID-19の感染拡大防止のため、大学、図書館等の研究機関が閉鎖され、資料収集を始めとする研究の再開も遅れた。 上記の理由で本年度は、関連書籍の読解、および関連する文学作品のアダプテーションの実見をできるだけ進めるという、限られた形で研究を行った。たとえば具体的には、ハッチオンを始めとりわけ米国でアダプテーション理論研究は進んできたが、近年では日本でも複数のグループによって相次いでアダプテーションに関する論文集が発行されており、さらには分野横断的な研究が遅れがちであったフランスでも研究書(Jean Cleder ; Laurent Jullier, "Analyser une adaptation. Du texte a l'ecran", 2017など)が出始めている。そうしたアダプテーション研究の動向を可能な限り把握するよう努めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
2019年度は妊娠が確定し、産休・育休に入ったため、予定されていた研究計画の遂行が困難になった。さらに、年度末のCOVID-19の感染拡大により、大学・図書館等研究機関の閉鎖が相次ぎ、研究再開も遅れることとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
基本的には、研究期間を延長したこともあり、初年度に実施できなかった計画に着手する。 また当初の計画では研究期間2年目以降には、Association of Adaptation Studiesの国際学会(2020年10月、フランス、ディジョン)や、横断的研究をメインテーマとするAIZEN国際学会の30周年記念シンポジウム"Emile Zola, Naturalism, and Protest”(2022年3月、米国、アラバマ)等に参加応募し、研究の成果を発表する予定であった。 しかし、COVID-19のためにディジョンの学会はすでにキャンセルが確定となった。米国のシンポジウムについても今後の情勢で開催が不確実となることも予想される。したがって研究発表の場については、COVID-19の拡大状況に応じて、必要があれば適宜発表形態を変更して調整していく。 長期休業期間中に渡航を予定していた国立フランス図書館 、シネマテーク図書館等での資料調査は、当面はオンラインで閲覧できるものに的を絞り、COVID-19終息の目処がたって開館され次第、渡航調査を実施する。 研究期間初年度には遅れていた論文の執筆および国内外の学会誌等への投稿は、時期をずらして2年目以降に実行する。
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Causes of Carryover |
上記のとおり、研究期間初年度に妊娠・出産したため、予定していた国内外の出張がキャンセルされ、それに伴って旅費が発生しなくなった。論文執筆のための周辺機器購入や、欧文校閲の謝金なども、当初の予定と異なり未発生となった。 したがって研究期間を1年延長することにより、初年度の計画を2年目以降に実施していくこととする。
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