2022 Fiscal Year Research-status Report
チェコ女性作家B・M・エリアーショヴァーと日本旅行記・ジャポニズム文学の研究
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19K13142
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Research Institution | Jissen Women's University |
Principal Investigator |
BRUNA LUKAS 実践女子大学, 文学部, 准教授 (10780827)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ジャポニズム / 日本趣味 / チェコ・中欧文学 / 日本近代文学 / エリアーショヴァー / ホロウハ |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度は、女性旅行家B・M・エリアーショヴァーを中心としたチェコのジャポニズム文学に関する現地での資料調査をつづけると同時に、資料調査と作品分析を踏まえた研究成果をまとめ、複数の研究論文と口頭発表により公開した。なお、本研究の一環として関連シンポジウムと展示会を複数開催し、中欧・チェコのジャポニズム文学や日本・チェコ文化交流について、学界にとどまらず幅広く発信した。以下、主な成果について要点をまとめた。 ①『實踐國文學』にエリアーショヴァーの初来日の背景に光を当てた「忘れえぬ人々─女性旅行家B・M・エリアーショヴァーの初来日の背景」(2022年10月)と、1926年に来日したホロウハについて報道した日本新聞の記事を分析した「茶漬けの味もわかるチェコの日本通 一九二六年の日本新聞にみる旅行家J・ホロウハの肖像」(2023年3月)を発表。 ②2022年5月28日に、小説家、翻訳家のロジャー・パルバースを招き、実践女子大学特別講演会「世界文学とジャポニズム」第2回をオンラインで開催、本学の学生と一般の人を対象に「日本人の笑い」というテーマで講演してもらった。その他、11月26日にオンライン国際シンポジウム「西洋の女性たちが見た近代日本」、2023年2月20日にチェコ共和国カレル大学でシンポジウム「チェコの女性たちとオリエント」、3月11日に「チェコとウクライナ2022/2023」を開催。 ③研究論文と口頭発表のほかに、2022年12月15日~2023年1月25日に在チェコ共和国日本国大使館広報文化センターで、チェコ文学の日本語訳を紹介する展示「日本とチェコを結ぶ文学」、2023年2月6日~3月20日に駐日チェコ共和国大使館チェコセンターで、ナープルステク博物館との共催の写真展「チェコの旅行家たちの目に映った近代日本」を開催し、近代日本とチェコの文学や文化交流について紹介した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2022年度は、2020年以降国内外で新コロナウィルス感染症予防対策の一環として実施されてきた措置が大幅に緩和され、資料調査を目的とした海外出張、また国内での資料調査や取材も可能となったため、申請時に予定されていた調査、展示やシンポジウムなどのイベント開催、また研究成果の公開も予定どおりに進めることができ、申請時に予定していなかったオンライン・シンポジウム「チェコとウクライナ2022/2023」まで企画・実施することができた。 研究代表者の研究成果に、研究論文2点、書評1点、報告1点、紹介記事1点があり、口頭での研究発表を3回行った。既に活字になっている上記の研究論文の他に、年度内刊行予定の共著『R.U.R. 100 Capkovi roboti doma a ve svete』(Academia社)と、共著『Odrazy Vesmiru v nas』(Karolinum社)に収録される研究論文2点を執筆提出した。 一般の方を主な対象としたイベントを国内外で複数開催することもできた。「日本とチェコを結ぶ文学」展をチェコ共和国で、写真展「チェコの旅行家たちの目に映った近代日本」を日本で開催した。また、チェコ共和国のカレル大学で対面シンポジウム「チェコの女性たちとオリエント」(使用言語チェコ語)と、オンライン・シンポジウム「西洋の女性たちが見た近代日本」と「チェコとウクライナ2022/2023」(使用言語日本語)を企画開催し、研究成果を両国で、チェコ語と日本語で幅広く発信することができた。この中で「チェコとウクライナ2022/2023」は、研究代表者がこれまで研究してきた〈移動〉や異文化交流というテーマを現在の社会情勢に関連づけて再考した企画として注目を浴び、約50人の参加者が集まった。 上記を踏まえて本研究の現在までの進捗状況については、おおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は、チェコの旅行家エリアーショヴァーを中心に、中欧・チェコのジャポニズム文学について資料調査および作品分析を行い、研究成果を学界の内外にて発信してきた。その結果、エリアーショヴァーの生涯や彼女の功績、エリアーショヴァーと日本の文化人との交流、チェコと日本での彼女の執筆活動の内容のほかに、ホロウハやハヴラサなどその周辺の人物たちの活動も照らし出され、チェコのジャポニズム文学の俯瞰図が鮮明に見えてきた。複数の研究成果の発表や関連イベントの開催により、ジャポニズム文学そのものと、近代チェコ文学におけるジャポニズムという問題への関心が高まりつつあると考える。 本研究は本来2022年度を最終年度としていたが、新コロナウィルス感染症の拡大のため準備状況がやや遅れた企画があり、そのため2023年度を最終年度に変更した。今年度の主な企画としては、本研究の集大成ともなる、エリアーショヴァーの生涯とその功績を紹介するパネル展示を作成する。これまで駐日チェコ共和国大使館チェコセンターと在チェコ共和国日本大使館文化広報センターで開催した展示と異なり、エリアーショヴァーという人物や近代のチェコと日本の交流について学生に対して発信することを目的とし、実践女子大学と東京外国語大学をはじめ複数の大学で展示を行うことを予定している。 研究論文による研究成果の公開も『實踐國文學』その他の研究雑誌で行いつづける予定である。本研究期間終了後となるが、2024年に19世紀末と20世紀前半の近代チェコ文学にみるジャポニズムをテーマに単著『チェコのジャポニズム文学』の出版を予定し、現在執筆中である。また、本研究で主な研究対象としてきたエリアーショヴァーの人物とその功績を紹介する単著の出版も予定している。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルス感染症拡大防止にかかわる規制により「エリアーショヴァーと日本」をテーマにしたパネル展示の準備状況が遅れたため、次年度使用額が生じた。上記のパネル展示の製作費に充てることを予定している。
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