2021 Fiscal Year Research-status Report
戦間期フランス文学におけるジェンダー観の揺らぎと女性作家の社会的スタンス
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19K13143
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Research Institution | Shirayuri University |
Principal Investigator |
村中 由美子 白百合女子大学, 文学部, 准教授 (40791174)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | マルグリット・ユルスナール / ジェンダー / カヴァフィス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、マルグリット・ユルスナールを中心とする戦間期のフランス文学作品から、新たなジェンダー観の芽生えを抽出することを通して新たなジェンダー観について考えることを目的としている。 今年度の成果の一つ目として、ギリシャ詩人カヴァフィスの詩に関するユルスナールの論考を分析することで、ユルスナールのジェンダー観が形成される上で、同性愛的な気質を持つカヴァフィスの影響があったのではないかという仮説を導くことができた。カヴァフィスはエジプトのアレクサンドリアで生まれ、ギリシャ語で詩を書いたが、血縁によるギリシャ性ではなく、文化として習得されたギリシャ性のなかに生きていた。血縁、つまり生まれによるのではなく、後天的に身につけられるものとしてのギリシャ性という考えが、新しいジェンダー観にもつながるのではないかと考えられる。 二つ目の成果として、ユルスナールのジェンダー観に関する本研究から、「生きやすさ」をキーワードにさらに発展させ、ユルスナールの環境問題への関心について検討する準備ができた。日本フランス語フランス文学会関東支部大会にて開催されたシンポジウム、「文学を歩く、庭を歩く」においてパネリストとして招聘され、発表する機会をいただいた。「庭」というモチーフを通して、ジェンダーに関係なく生きやすい社会は動物や植物にとっても生きやすい社会であり、そのような世界をユルスナールは作品を通して志向していたのではないかという考えに至った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
海外での資料調査が一切できなかったため。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究に関連する発表の提案が採択され、2022年10月にポーランドで開催される国際ユルスナール学会で発表する機会を得ている。学会のテーマもまさに「マルグリット・ユルスナールと世界への配慮」であり、ジェンダーや環境問題といった本研究と直結するテーマについて第一線の研究者たちと議論ができる。この貴重な機会を生かして研究の遅れを取り戻し、さらに進展させたい。
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Causes of Carryover |
予定していた海外での資料調査が一切できていないため、次年度助成額が生じている。 翌年度分として請求した助成金とともに、今年度予定している国際学会のための旅費等に使用したい。
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