2021 Fiscal Year Research-status Report
姉妹をめぐる文学の言説――ドイツ語と日本語の文学を中心に
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19K13146
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
宮崎 麻子 大阪大学, 言語文化研究科(言語文化専攻), 准教授 (60724763)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 姉妹 / ジェンダー表象 / フェミニズム / 東ドイツ / クリスタ・ヴォルフ |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年のドイツでの資料取集で集めた資料に加え、前年度の終わり(2021年3月)にドイツ在住の研究者の協力によって追加で収集した資料をもとに、読み込みを進めた。 論集からの寄稿依頼を二件受けており、本研究課題に関連する論文を公開する予定が具体的になってきている(ただし二件とも、論集の完成までおそらく2年程かかるであろうと予想される)。片方はドイツ文学と映画をめぐる論集であり、本課題で扱ってきたクリスタ・ヴォルフの作品をそこで分析することになった。ヴォルフの小説『引き裂かれた空』(1963)とその映画化(1964)について作品分析をすすめた。この作業に関しては非常に順調な進捗があった。もう一方はドイツ文学と家族をめぐる論集であり、本課題で扱ってきた(ポスト)東ドイツ文学における姉妹のモチーフを読み解く論文を寄稿すべく、準備中である。こちらに関しては、まだ着手したばかりであるが、2019年にマールバッハの国際学会で発表した成果をさらに発展させた記述(2000年代のポスト東ドイツ文学における姉妹)と、1980年代の東ドイツ文学(ヴォルフ『カサンドラ』(1983)における姉妹)の分析とを含めたいと考えている。 また、教育活動の中で女性像についての講義・議論を行え、間接的な形ではあるが今後の研究の進展にその経験が生きるだろうという感触を得た。大阪大学大学院で担当した「ジェンダー論A, B」科目において、問題意識のある受講生たちと、文学やその他のメディア(映画、美術、マンガ、広告など)における女性像にかんして、幅広い事例をもとにして議論を行えた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度は刊行物や口頭発表という表立った形で学術的成果を公表することはできなかった。しかし、資料の読み込みにおいて一定の進捗をみた。また、論集への寄稿(依頼論文)の中で本テーマの成果を公表する予定が見えてきて、その執筆作業についても、一定の進捗があった。 一方、長引くコロナ禍と、申請者の所属組織の変更とが重なり、ドイツでの資料収集は行えなかった。また、ワークショップの計画も進んでおらず、これらについては次年度に具体的な計画を立てたいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度、ポスト東ドイツ文学における姉妹の形象の考察から、クリスタ・ヴォルフの文学史的影響力の大きさが確認され、ヴォルフの作品群も考察に取り入れることに決めた。本年度は、日本語論文二件(依頼された論集への寄稿論文)の執筆に着手し、そのどちらにも、クリスタ・ヴォルフ作品についての考察を含めることとした。特に長編小説『カサンドラ』(1983)については、ギリシア神話の姉妹が登場する部分がある。その分析が、次年度まず着手すべき課題となる。 ヴォルフに関しては作家研究・作品研究は大量にあり、今後、その中から女性像を分析した先行研究を抽出し、先行の議論を確認していく必要がある。 次年度は、ドイツに資料収集に出かける目途は立っておらず、必要に応じて書籍の輸入や、現地の方に協力を依頼しての資料収集を行いたい。次々年度にドイツでの資料収集に出かけたい。 本科研の申請時から構想しているワークショップの計画を具体化していくことも今後の課題である。コロナ禍により当初大まかに思い描いた催事の形式を変更するか否かという問題が生じた。また、申請者は2022年4月に異動し、研究拠点が変わった。これら二つの事情から、催し物を行う拠点と方法、招待しうるゲストなど、すべての点において、計画が一時停止している。新年度にあらたな体制を整え、ワークショップの企画を具体化したい。
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Causes of Carryover |
コロナ禍が主な理由で、ドイツでの資料収集を延期とした。コロナ禍と転勤の両方の理由で、ワークショップの計画を延期とした。資料収集およびワークショップの計画に関して、次年度に計画を具体化し、そのための予算とする。
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