2019 Fiscal Year Research-status Report
International Development of Animal Studies: An Approach from Japanese Literature and Culture
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19K13147
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
江口 真規 筑波大学, 人文社会系, 助教 (30779624)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | アニマル・スタディーズ / 比較文学 / 文学論 / 羊 / 動物の権利 / 動物の福祉 / 菜食主義 / 海外における日本文学・日本文化 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和元年度は、アニマル・スタディーズの国際的動向に関して、文献や学会参加を通して情報収集を進めるとともに、その概要や研究手法の紹介を国内外で積極的に行った。ニュージーランドで開催されたDecolonizing Animals: Australasian Animal Studies Association Conference 2019では、日本の羊毛・羊肉産業と植民地政策について口頭発表を行った。ここでは、カンタベリー大学のNew Zealand Centre for Human-Animal Studiesに所属する教員や学生と、近年の研究について意見・情報を交換することができた。アニマル・スタディーズの問題意識の一つでもある “Intersection of the oppressions”(抑圧の交差)に関して、動物の解放運動が、女性やLGBTQ、先住民の権利擁護運動や、貧困層への食事支援(Food Justice運動)の活動と結び付いている実態を知ることができた。 日本文学の三学会合同国際集会では、「ジェンダー・肉食・震災」の観点からパネル発表を行い、参加者各国の研究事例について情報を共有し、古典文学と近現代文学の比較を行うことができた。発表者や参加者とは、今後共同研究を進め、日本文学の事例からアニマル・スタディーズの問題に提言することを予定している。 また、マレーシア工科大学における人文学研究のシンポジウムに参加し、アニマル・スタディーズの概要と発展の歴史について発表した。これらの活動を通して、アニマル・スタディーズが、多文化共生や環境問題にアプローチできる人文学研究の枠組みの一つとなりうることを示した。開催が延期になったウズベキスタンの国際シンポジウムや、ヒトと動物の関係学会を含め、今後も複数の地域や研究分野において発表を続けていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新型コロナウイルスの影響のため、年度末の学会参加予定に変更があったものの、アニマル・スタディーズの国際的動向に関する文献や、ニュージーランドにおける事例の調査を進めることができた。今後は、これらについて現時点でわかっていることを文章化することで、アニマル・スタディーズでの議論と方法論を広く共有していきたい。また、問題意識を同じくする研究者との交流を通じて、本研究課題のみでは理解を深めることが難しい古典文学や社会学、倫理学の見識を得ることができた点も、令和元年度の研究の進展の一つである。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)アニマル・スタディーズの研究集会への参加と、教育研究機関に関する調査 当初、アニマル・スタディーズを専門とする教育研究機関について、令和2年夏にアメリカでの調査(①Summer Institute for Human-Animal Studiesへの参加、②Animals and Society Instituteとニューヨーク大学での調査)を行う予定であった。しかし、新型コロナウイルスの影響により海外渡航が難しい状況が続くと想定されるため、次年度以降に変更する。令和元年度から開催が延期された学会(ウズベキスタンの国際シンポジウム、及びヒトと動物の関係学会)には、令和2年度以降に参加予定である。また、令和3年にシドニーで開催が予定されているAnimals and Climate Emergency Conferenceにおいて、日本の動物と気候変動に関する議論を行うため、国内外の研究者とパネル発表を企画し準備を進める。 (2)アニマル・スタディーズ関連文献の収集と精読 (1)の変更に伴い、令和2年度は、関連文献の収集と精読を中心に行う予定である。アニマル・スタディーズの理論的背景や実践方法、研究事例について、特に文学・文化研究の視点から内容をまとめ論文を執筆する。合わせて、日本文化における動物に関する考察、特に宗教と西欧の近代科学の影響に関する基本的な文献の読解を進めていく。平成29年度から取り組んできた、東日本大震災以後の文学作品に描かれた動物とジェンダーをめぐる問題に関して、エコフェミニズムの論点を参考にしながら分析し、論文にまとめることを目標とする。また、動物と人間の関係や農業での取り組み、擬人化された動物の社会を描く近年のマンガ・アニメ作品の分析にも取り組む。
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Causes of Carryover |
令和元年7月には、ニュージーランドでの国際学会参加のための旅費支出を予定していたが、これに関しては学内プロジェクト経費から支出されることとなった。 また、令和2年3月にウズベキスタンでの国際シンポジウム、及びヒトと動物の関係学会学術大会に参加予定であり、国内図書館での資料収集も予定していたが、新型コロナウイルスの影響のためいずれも中止・延期となり、旅費の使用がなくなった。これらについては、令和2年度以降に変更して実施予定である。
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Research Products
(7 results)