2021 Fiscal Year Research-status Report
International Development of Animal Studies: An Approach from Japanese Literature and Culture
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19K13147
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
江口 真規 筑波大学, 人文社会系, 助教 (30779624)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | アニマル・スタディーズ / エコクリティシズム / 動物の権利 / アニマル・ウェルフェア / 菜食主義 / ヴィーガン / 人新世 / 羊 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和3年度は、海外渡航や現地調査に伴う移動の制限が続いたため当初の予定を変更し、関連文献の収集と論文執筆、オンラインでの学会参加・発表を中心に行った。アニマル・スタディーズの発展と動向について、特に文学・文化研究とアクティビズムとの関わりの観点から分析した論文を『比較文化研究』に発表し、近年の文学研究における議論点については物語研究会で口頭発表を行った。動物の表象に関する具体的な事例の研究に関しては、羊と眠りとの結び付きを日本文化の背景から考察し、動物と夢に関するドイツの学会で口頭発表を行った。エコクリティシズム関連の研究会では、文学と疫病に関するテーマで研究を進めており、食肉処理場で働くアフリカ系アメリカ人の生活を描いた映画Killer of Sheepの羊の表象について、1970年代アメリカの黒人表象の背景を踏まえてアメリカ文学会で口頭発表を行った。また、筑波大学人文社会科学研究群での公開講座「危機の時代に立ち向かうグラフィックノベル」では、アニマル・スタディーズの観点から日本のマンガ作品を読み解く事例を紹介し、マンガ家を含む参加者と情報交換や討議を行うことができた。 令和2年度に引き続き、「世界文学と日本文学」や自由科目「ポスト・アントロポセン」等の授業でアニマル・スタディーズに関する内容を取り扱い、学生の関心を喚起できた点も本年度の成果の一つである。卒業論文や修士論文のテーマとして、動物の権利や日本文化における動物の事例を取り扱った学生もおり、アニマル・スタディーズの教育効果の可能性もうかがえるようになった。また、令和3年度には、主に学内の研究者を中心に、農学や生物学、民俗学、文化人類学、芸術等の分野で動物について研究を行っている研究者と懇談会を開催した。これらの交流をもとに、今後シンポジウムの開催を検討している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和2年度に引き続き、海外における現地調査は実施できていないものの、関連文献の収集と精読、具体的な作品や事例についての分析を進めることができた。また、学内の様々な分野で動物について研究している研究者や学生と交流し、今後の研究の方針や活動内容についての視座を得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)動物の表象と文学・文化に関する事例の研究:令和3年度に学会発表を行ったテーマに関して、さらに調査と考察を深め、論文執筆を進める。具体的には、アメリカの映画Killer of Sheepにおける羊の表象、日本文化における羊と眠りの結び付き、近年のアニマル・スタディーズと文学研究に関してである。 (2)活動報告書『大学のなかの動物たち』(仮)の刊行:これまでの研究から明らかになったアニマル・スタディーズの概要や、本研究課題の取り組み、教育実践の事例をまとめた報告書を作成予定である。報告書は、研究者だけではなく広い範囲の読者を想定し、わかりやすい内容で作成することを志している。社会における人間と動物の関わりを考えるために、まずは最も身近な存在である大学内の動物(実験動物や畜産動物、野生動物を含む)に焦点を当てた「筑波大学動物マップ」を作成し、報告書に掲載する。また、授業の期末レポートとして提出された動物に関する文学作品も掲載予定である。報告書の制作に関しては、編集や紙面のアイディア、校正等の作業の補助を学生スタッフに依頼し、下記シンポジウムでも配布予定である。 (3)アニマル・スタディーズに関するシンポジウムの開催:本研究課題の当初の計画では、令和3年度に国内外の研究者を招聘して研究集会を開催する予定であった。新型コロナウイルス感染症の影響のため実施することができなかったが、令和4年度は、これまでに交流のあった国内の研究者や活動家を招聘して、「アニマル・スタディーズの発展に向けて:筑波大学「動物学群」シンポジウム」(仮)を開催予定である。日本におけるアニマル・スタディーズの今後の発展の可能性を、研究学園都市・つくばから模索し、文系/理系、大学/産業、アカデミズム/アクティビズムの垣根を超えた交流の場を構築することを目的とする。
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Causes of Carryover |
当初の計画では、令和2年度にアニマル・スタディーズを専門とする教育研究機関での調査を行う予定であった。また、令和3年度には、国内外の研究者を招聘して研究集会を開催する予定であった。しかし、新型コロナウイルス感染症の影響のため、国内外の移動が制限される状況が続いた。動物の保護活動に関わる現場の調査や訪問を含むため、これらの活動はオンラインでの実施が難しく、今後感染状況をみながら可能な限りオンサイトでの実施を予定している。 学会や研究会、打ち合わせの参加についても、旅費を計上していたが、令和3年度はその多くがオンラインでの開催となり、旅費の支払いが不要となった。
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