2021 Fiscal Year Research-status Report
「1965年体制」成立期日韓ポストコロニアル文学における植民地主義批判の比較研究
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19K13153
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
原 佑介 金沢大学, 歴史言語文化学系, 准教授 (40778940)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 日本近代文学 / 在日朝鮮人文学 / ポストコロニアル研究 / 植民地主義 / 小林勝 / 村松武司 / 麗羅 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年5月30日、国際高麗学会日本支部第25回学術大会(オンライン)にて、口頭発表「日本近代文学にあらわれた「不逞鮮人」と朝鮮人女性――田宮虎彦「朝鮮ダリヤ」と中西伊之助「不逞鮮人」を手がかりに」をおこなった。2021年10月2日、金沢大学国語国文学会2021年度大会(オンライン)にて、招待講演「歴史のなかに消えた故郷――朝鮮植民者二世小林勝のポスト植民者文学、その現代的意義」をおこなった。そのほか、韓国語での研究発表を4回おこなった(いずれもオンライン)。 刊行物としては、蘭信三・松田利彦・李洪章・原佑介・坂部晶子・八尾祥平編『帝国のはざまを生きる――交錯する国境、人の移動、アイデンティティ』(みずき書林、2022年3月)の刊行に編著者として参画し、同書所収論文「ポストコロニアル日本語文学と朝鮮戦争――小林勝の反戦運動と麗羅の従軍体験に着目して」および総説「朝鮮戦争――帝国の戦争から旧植民地の分断へ」を担当した。そのほか、近日中に日本語論文1本、韓国語論文1本が公刊される予定である。 当該年度は、いずれもいわゆる皇国臣民世代である小林勝、村松武司、麗羅、李恢成の朝鮮戦争時の活動を中心に、ポストコロニアル作家として自己形成をしていくそれぞれの過程を比較検討した。また、戦後日本においてポストコロニアル文学研究を先導したメディアである在日朝鮮人雑誌『季刊三千里』で、朝鮮植民者たちがどのような言論活動を展開していたかを詳細に検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
戦後日本文学史における代表的な反植民地主義作家である小林勝と村松武司の朝鮮戦争時の動向の比較研究をさらに進めた。また、この比較研究に加え、当該年度は、小林や村松と同世代の在日コリアン作家である麗羅と李恢成の植民地解放前後から朝鮮戦争期にかけての動向を明らかにした。1920~1930年代生まれのポストコロニアル作家たちのなかで、これらの重要作家たちの1940~1960年代の活動および初期作品の比較検討を進めることができた。 これらの成果を、複数の研究論文のほか、韓国および中国の近現代文学研究のコミュニティで発表することができた(韓国・延世大学および高麗大学、中国・南京大学)。
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Strategy for Future Research Activity |
過去二年間、新型コロナウィルス感染拡大の影響を受け、当初予定していた韓国での資料収集およびフィールドワークを実施することができなかった。今年度は、状況の推移を慎重に見守り、問題のない範囲内で韓国での調査を実施する予定である。前年度まで日本人と在日朝鮮人のポストコロニアル作家たちの比較研究を順調に進めることができたため、今後はとくに孫昌渉、李浩哲、柳宗鎬を中心に、小林勝や村松武司らと同世代の韓国人ポストコロニアル作家たちの解放後の歩みを重点的に検討する。 また、関東大震災100周年に当たる2023年を見据え、兼ねてから中西伊之助や田宮虎彦の反植民地主義小説の分析を進めてきたが、これらの成果をベースにして、日本近代文学における「不逞鮮人」表象の批判的分析をいっそう進める。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルス感染拡大の影響により、当初予定していた韓国での資料収集およびフィールドワークを実施することができなかった。今後、状況の推移を慎重に見守り、問題のない範囲内で海外での調査活動を実施する予定である。
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