2019 Fiscal Year Research-status Report
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19K13154
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
平田 未季 北海道大学, 高等教育推進機構, 准教授 (50734919)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 指示詞 / 共同注意 / 相互行為 / 注意の調整 / 外部照応 / 内部照応 |
Outline of Annual Research Achievements |
指示詞は、言語普遍的に複数の意味素性と複数の統語カテゴリーを含む体系を成している。本研究では、なぜ指示詞は常にこのような言語内的な体系を形成するのか、このような言語内的な体系が実際のやりとりにどのように寄与しているのかを明らかにするため、日本語母語話者の自発的なやりとりを録画・録音したデータを用いて、やりとりの現場で指示詞の意味的・統語的多様性がどのように利用されているのかを分析する。 2019年度は、研究協力者とともに、30時間以上にわたる屋外のやりとり場面のデータを収集し、そこから指示詞のプロトタイプ的な用法である外部照応用法を含む一連のやりとりを抽出して分析した。一連のやりとりの中で指示詞の外部照応用法をみると、それはやりとり全体の目的(Main Activity (MA) )を遂行するためのSide Activity (SA) として生じる強い傾向があることが分かる。SA中の指示とSAからMAへの移行時の指示、そしてその後のMA内での指示は、同一の対象を指していながら、異なる指示形式が選択されている。これらの指示において、話し手は、聞き手の注意状態を推定し、Activityの遂行のためどれだけの注意を指示対象に向けさせるべきかを考慮し、指示詞の意味素性・統語素性を選択し分けていると考えられる。本研究では、話し手が、現場のどのような情報を参照して、聞き手の注意状態を推定するのかを明らかにするため、やりとりの場面における参加者のふるまいを、視線、身体動作、ジェスチャーを含め詳細に記述した。さらに、記述したデータの分析をもとに、特に話し手の指示詞の意味素性・統語カテゴリーの選択に関わる要因を特定した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度は、研究協力者とともに日本語母語話者同士のやりとり場面のデータを収集し、会話分析を専門とする研究者達とのデータセッションを通じてその分析を行うことを目的としていた。データは予定していた量の3分の2程度は収集することができたが、年度後半に予定していたデータセッションは、感染症の影響により十分に実施することができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度は、2019年度に行った成人の日本語母語話者間のやりとりに基づく分析成果を検証するため、ペットと飼い主、ロボットと人など、相手の注意状態の推定が困難であると考えられるやりとり場面を収集・分析し、周辺的な場面でもSA・MAという構造、指示詞の質的素性・統語素性の利用が観察されるか否かを検証する。周辺的な場面と対照させることで、典型的な場面での注意状態の推定に関わる要因と指示詞体系の利用の実態をより明確にすることができると思われる。以上の分析をもとに、最終年度である2021年度は、現場の物理的なやりとりと、指示詞が発達させてきた言語内的な統語体系、言語内指示用法との相関について分析する。
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Causes of Carryover |
感染症の影響により、年度末に予定していた学会参加およびデータセッションが行えず旅費の一部を使用できなかったため。また同じく年度末に予定していたデータ収集が行えず、人件費・謝金の一部を使用できなかったため。
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Research Products
(2 results)