2023 Fiscal Year Research-status Report
Empirical Study on the Acquisition of Japanese V-V Compounds
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19K13161
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Research Institution | Kyushu International University |
Principal Investigator |
木戸 康人 九州国際大学, 現代ビジネス学部, 准教授 (30800841)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 日本語複合動詞 / CHILDES |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、3つのことを行った。第一に、「複合動詞の獲得」と「CHILDES」についての概説コラムを執筆したことである。これまで研究してきたように、日本語母語児がいつ、どのような複合動詞を発話するのかを観察したことや2023年時点で検証されてきた研究成果について概説した。また、CHILDESについてもCHILDESの使い方だけでなく、2023年時点でCHILDESの発展版であるCHILDES-dbなどについても紹介した。このような2つのコラムは『言語理論・言語獲得理論から見たキータームと名著解題』68-69,86-87, 東京, 開拓社. ISBN: 9784758923828.に収録されている。 第二に、Studies in Language Sciences: Journal of the Japanese Society for Language Sciences, 21(2), 1-14.のジャーナルに「CHILDESの展望と統語的複合動詞の獲得」というタイトルの論文を投稿したことである。本稿では、なぜ日本語複合動詞の獲得には一定の発現順序があるのか、という問いに対して、幼児語の特徴が関係している可能性があること、日本語複合動詞を獲得するためには、連用形の獲得が十分条件であることなどを明らかにした。 第三に、「引っこ抜く」「落っこちる」「落っことす」で観察される接辞「っこ」の多義性について、論文を執筆した。複合動詞「引っこ抜く」の中に現れる「っこ」がなぜ挿入されているのか、この問いを明らかにするために、「っこ」が関係するデータを集め、日本語には5つの「っこ」があると述べた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
日本語複合動詞に関する発話データベースCHILDESを用いた実証研究がおおむね順調に進展している。具体的には、語彙的複合動詞と統語的複合動詞で獲得過程に違いがあることを幼児の発話、Child-directed speeech、タイプ、トークンなど、多角的に分析を行うことができた。 ただし、新型コロナウイルス感染症の蔓延により、心理実験を行うことが困難であった。現在、受け入れ先を探している段階である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は他言語との比較を積極的に行っていく。複合動詞は日本語だけでなくアジアの言語(韓国語や中国語等)でも多く観察されることが知られている。日本語複合動詞の獲得に関してデータが蓄積されてきた今、通言語的研究を行うことで、言語の普遍性と個別性の追究に日本語複合動詞の観点から一翼を担う。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症により研究が滞った時期に行う予定であった研究を遂行するため。また、その時期の後、研究を再開したことにより先行研究読む必要があり、ILLを利用して論文を集める必要がある。そのための費用が必要である。
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