2021 Fiscal Year Research-status Report
Crosslinguistic and theoretical research on sound symbolism: A perspective from child language acquisition
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19K13164
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
熊谷 学而 関西大学, 文学部, 准教授 (40793849)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 音象徴 / 英語 / 日本語 / 中国語 / 韓国語 / 母語獲得 / 理論言語学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、音象徴(音が意味やイメージを持つという現象)の観点から、「赤ちゃん」のイメージ、あるいは「大人」のイメージを持つ子音が存在するかどうか探求する。子どもの母語獲得において、子音を獲得する順序は概ね決まっている。例えば、両唇音([p, m]など)は比較的獲得が早いが、[s]などの摩擦音は調音方法が難しいため、獲得が遅い。本研究では、獲得の早い子音は「赤ちゃん」のイメージを持ち、獲得の遅い子音は「大人」のイメージを持つという仮説を立て、日本語・英語・中国語・韓国語の4言語を対象とした実験検証を行う。各言語によって両唇音の目録や調音方法は異なるため、音象徴のつながりの普遍性と言語個別性の発見が期待できる。また、産出実験により、それらの音象徴のイメージが生産性を持つかどうかについても検証し、音象徴を理論言語学の分野に位置付けることを目指す。
本年度も「赤ちゃん」のイメージと結びついていると考えられる「やわらかい」イメージと「かわいい」イメージに焦点を当てて研究をした。まず、中国語・韓国語の2言語を対象とした実験結果と、日本語・英語の2言語を対象とした実験結果(Kumagai 2020)を合わせて、子どもの母語獲得の観点から、4言語において両唇音は「やわらかい」イメージと「かわいい」イメージの両方を喚起するかどうか議論した論文を出版した。
次に、日本人女性に使用されるニックネームにおいて、両唇音の中でも[p]の使用が目立つことから「[p]=かわいい」という音象徴的つながりに関する実験を2つ実施した。そして、理論言語学における音象徴研究の位置づけとして、これらの実験結果を、最大エントピー法(Maximum Entropy Model)を用いて分析した。この論文は、現在投稿中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
両唇音の音象徴の検証において、日本語・英語・中国語・韓国語を対象とした実験結果を議論した論文を出版することができ、本課題の仮説である、子どもの母語獲得の観点から音象徴的つながりの存在を説明できるかどうか検討できたため。また、実験で得られた音象徴的つながりを、理論言語学の分野に位置付ける論文が投稿できたため。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、獲得の遅い子音(摩擦音など)に焦点を当てて、それらが通言語的に「大人」のイメージを持つかどうか検証する。
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Causes of Carryover |
昨年度と同様、本年度は学会などがオンライン開催であったため、旅費の使用がなかった。また、実験参加者の収集はオンラインで行ったため、人件費ではなく、その他の経費から計上した。最終年度もオンライン実験を継続し、実験後に執筆する論文を投稿するため、その他の経費としての使用が見込まれる。
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Research Products
(13 results)