2019 Fiscal Year Research-status Report
訓点資料における点図情報の共有と書誌情報データベース基盤の整備
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19K13167
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
堤 智昭 筑波大学, 人文社会系, 助教 (80759035)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 訓点資料 / 日本語史 / ヲコト点 / 文理融合型研究 / 国語学 / データベース / デジタルアーカイブ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は訓点資料と呼ばれる古典籍を対象とし情報工学的アプローチから訓点の特性を明らかにすることを目的としている。訓点研究を行う研究者間でコンピュータを用いた情報共有を容易にし、ヲコト点の体系的研究の展開を図ることを、本研究では目標としている。これまでに訓点研究者が行ってきた研究過程、及びその成果を電子的に扱えるようにし、研究者間での情報共有、過去の研究成果との比較を容易にすることで目標を実現する。そのために今年度は、研究計画に示した要点のうち以下2点について研究開発を行った。 (1)実在する訓点資料から帰納した点図の電子化 (2)点図と関連する書誌情報を連携するためのデータベース基盤の整備 訓点資料の解読では、移点、釈文の作成を経て、書き下し文の作成に至る。一般的な訓点研究の研究成果としては、この書き下し文をもって成果とする場合と、解読過程においてその資料に記載された訓点に関して考察を行い、歴史や解釈方法をまとめる場合がある。そこで(1)については、主に後者の研究成果の情報化を行うため、実際に訓点資料の解読を行い、その過程で作られたヲコト点図を電子化する実験を行った。解読対象には国立国語研究所所蔵の尚書(古活字版)を用いた。また、作成したヲコト点図データをこれまでに電子化してきた主要なヲコト点図と比較をするためのツールを作成した。これらの成果は主に人文科学とコンピュータシンポジウム2019で発表している。 また(2)については、築島裕(1996)『平安時代訓点本論考研究編』に記載されたヲコト点図を、書誌情報とともに電子化した。これをもとに現在、データベース化し既存の情報基盤と連携するためのシステム設計・開発を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画において当初予定していた、「実在する訓点資料から帰納した点図の電子化」に関する試みは概ね計画通りに遂行した。主に二年目に予定している「点図と関連する書誌情報を連携するためのデータベース基盤の整備」についてもシステムの試作や方針の検討を行っており、概ね順調に進んでいる。また、本研究の最終年度の目標としている「訓点研究者が作成した点図を公開・共有するためのプラットフォームの整備」についても、現時点で方針の検討やプロトタイプシステムの開発を進めているため、このまま順調にいけば予定通りに進捗が推移すると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、令和2年度には「点図と関連する書誌情報を連携するためのデータベース基盤の整備」を主体として、令和3年度には「訓点研究者が作成した点図を公開・共有するためのプラットフォームの整備」を主体として研究をすすめる。 2019年末から流行が始まった新型コロナウィルス感染症の影響により、都内を始めとした研究機関の閉鎖が相次いでおり、各機関が所蔵する貴重書の閲覧が難しい状況になっている。初年度に研究対象としていた尚書(古活字版)を所蔵する国立国語研究所も4月当初から閉鎖状態となっているため、貴重書の閲覧が必要な研究項目については遅延が予想される。そのため、システム開発に注力するなど研究計画の順番を変更して、対応可能なところから着手していく予定である。
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Causes of Carryover |
今年度より、人文社会系学部に異動したため、当初予定していた専門性のあるデータ入力をゼミ等の教育業務と併せて行う機会を得た。そのため、関連する業務に関わる人件費を計上しなかった。一方で、以前の所属学部では情報システムの開発についてをゼミなどの教育業務と併せて行う予定であったが、現所属ではそれが難しいため、残金は次年度以降は必要に応じてこちらの業務委託等に用いる予定である。 また、初年度から国際会議で発表する機会を得たため旅費の支出が多くなった。その分を当初謝金として予定していた予算から振り替えて使用する。
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Research Products
(7 results)