2022 Fiscal Year Annual Research Report
ルーマニアとモルドバにおけるブルガリア系住民の言語保持に関する社会言語学的研究
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19K13175
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
菅井 健太 北海道大学, 文学研究院, 准教授 (20824361)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 言語保持 / 言語取替え / 言語復興 / 言語変化 |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度は、コロナウィルス感染症による移動制限が徐々に緩和されたことに伴い、ブルガリア語が若い世代にまで継承されているルーマニア・トゥルゴヴィシテ市とバレニ村、及びモルドバ・タラクリア県の複数の集落における現地調査も実施し、現在の言語状況やブルガリア語使用の実態、話者自身による言語に対する態度や考えなどに関する数多くの一次資料の収集を実現した。 加えて、これまでの研究の総括として、ルーマニアとモルドバに分布する複数のブルガリア系集落の言語状況や言語保持・取替えに関わる現状の対照分析や考察を中心に行った。 まず、Fishman (1991)の提唱したGIDS(Graded Intergenerational Disruption Scale)を拡大したLewis & Simons (2010)によるExpanded GIDSを適用して各集落のブルガリア語の言語活力の分析を行い、各集落における言語保持の現状について整理した。その結果、パルカニ村では言語取替えが急速に進みつつあることが示された。ブルガリア系集落間の比較分析を通じて、ロシア語への取替えを促進する要因を指摘したほか、言語保持・言語復興のためにカギとなる方策についての考察も行った。本研究の成果は、ソフィア大学(ブルガリア)主催の国際会議において口頭発表を行い、当該会議の論集に投稿した。 さらに、言語面から言語保持・取替えについて考察を行うことを目的に、ルーマニアのブルガリア語方言における名詞類の借用に伴って見られる形態論的な適応プロセスについての分析も並行して進めた。この成果はSlavic Linguistic Societyの第17回大会に参加して口頭で報告した。 言語構造の変化に対して、その言語話者を取り囲む社会状況や接触の強度がどのように関与するかについてのより詳細な分析・考察を進めていくことは今後の課題である。
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Remarks |
3点目の雑誌論文については、査読を通過したが、その後に発生したロシアによるウクライナ侵攻の関係で、当該論集の発刊は保留されており、現時点ではいつ発刊されるか見通しが立っていない。
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