2019 Fiscal Year Research-status Report
文章展開メカニズムの解明に向けた語彙拡張プロセスに関する研究
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19K13176
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Research Institution | Joetsu University of Education |
Principal Investigator |
鯨井 綾希 上越教育大学, 大学院学校教育研究科, 講師 (10757850)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 共起語ネットワーク / 語彙的結束性 / 文章展開 / 主要反復語句 / 部分反復語句 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、日本語の文章における内容展開がどのような言語的仕組みによって行われているのかという問題を、語という単位の集合体である語彙の構造との関係の中で明らかにしていくことを目的とする。文章の内容展開を語彙の側面から明らかにするために、ネットワーク分析と呼ばれる手法を用い、文章の展開に伴う語彙の拡張プロセスをネットワーク形成に見立てて分析する。この分析により、文章の展開と語彙との相互関係を視覚的かつ客観的に示していく。最終的に、文章展開という動的側面と文章内での語彙の拡張との関係を明らかにするとともに、文章研究に適用可能な新たな分析手法を提起することを目指す。 研究初年度は、分析資料と分析視座および分析用ツールを選定し、それらを活用した分析の有効性を検討した。文章の長さと内容の両面において妥当な資料として教科書の教材を選び、語彙の共起語ネットワークの変化を教材内の特徴語を中心とした語彙的結束性の拡張という視座から観察していくことで、文章内における語彙拡張プロセスの具体的な姿を事例的に示した。 また、文章の内容的特徴を決定づける語彙の性格に関する検討を行った。特に、語ごとの品詞性の問題に基づく語彙の整理という点に着目し、「名詞」とされる語群を、文章中での後接要素の量的傾向から分類し、「名詞」らしさに関わる特徴と具体的な語群との関係性を明らかにした。 上記の研究を通して、文章中における語彙の定量化に関する方法論を定めるとともに、次年度以降の研究成果の公表に向けた方向性を見出すことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
分析のための資料やツールの購入を計画通り行うことができた。また、それらを活用した実験的な研究を行い、その成果も論文として公表することができた。上記により、次年度に向けた研究の展望を十分に見定めることもできたため、おおむね順調に研究が進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
現在までの進捗状況から、研究の焦点を以下の二点に定め、入手した資料とツールを用いた分析を進めていく。 一、文章の内容展開に伴う語彙的結束性の連鎖の傾向を、多数の文章を資料とした共起語ネットワークの分析から明らかにする。 二、文章の類型に連動する語彙の特徴を、特に品詞の分布という観点から見出し、文章と語彙の影響関係を明らかにする。 なお、上記二つの観点から研究を進めるにあたっては、さらなる資料の拡充を行うとともに、個々の文章の性質をできる限り反映させた形で計量化を行うための方法論的検討も必要である。また、今後は、資料の収集と方法論の検討を引き続き行うとともに、具体的な研究成果の公表を行っていく。
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Causes of Carryover |
当該期間中に必要な物品等のうち、残り予算にて購入可能なものがなかったため。次年度は金額を正確に把握した上で、繰り越し予算を消耗品の購入にあて、適正な研究費執行を行いたい。
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