2020 Fiscal Year Research-status Report
文章展開メカニズムの解明に向けた語彙拡張プロセスに関する研究
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19K13176
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Research Institution | Joetsu University of Education |
Principal Investigator |
鯨井 綾希 上越教育大学, 大学院学校教育研究科, 講師 (10757850)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 学習者の日本語 / 接続語句 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、日本語の文章における内容展開がどのような言語的仕組みによって行われているのかという問題を、語という言語単位の集合体である語彙の構造との関係の中で明らかにすることを目的としている。特に、文章の展開に伴う語彙の拡張プロセスを、語同士の共起に基づくネットワーク形成に見立てながら分析していき、文章展開という動的側面における語彙の運用のメカニズムを詳らかにするとともに、そのための方法論も確立していくことを目指す。 研究計画3年のうちの2年目である本年度は、昨年度の学校教科書とは異なる具体的な文章のバリエーションとして日本語学習者の日本語を取り上げ、日本語母語話者との比較を通して、同一課題で文章を構築する際に運用される語彙の構築プロセスの違いを明らかにした。特に、学習者と母語話者の語彙の共起頻度に基づく語彙ネットワークの連結手法の違いを見出すことで、文章作成の際の両者の視点の違いを明確にした。 また、学校教科書についても、接続詞・接続助詞と内容展開との関係に関する具体的な考察を行い、昨年度に取り上げた国語科の「説明文」とは異なる、文学作品としての「詩」における語彙運用の効果を指摘した。 上記の研究を通して、日本語の文章のバリエーションに基づく語彙の拡張プロセスを分析することができた。昨年度の方法論的研究に加え、本年度は具体的な言語対象の研究をさらに進めることができたため、最終年度はそれらを踏まえた研究の総括が可能になると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度に検討した分析方法を用いながら、研究計画にあわせた分析を進めることができた。また、それらの研究成果についても、一部を除き年度内に公表することができた。上記により、最終年度に向けて、おおむね順調に研究が進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度および本年度の研究の進捗状況から、最終年度に向けて以下の取り組みに注力する。 一、「新聞」などを対象に、さらに広い範囲での日本語文章内の語彙拡張プロセスを見出す。 二、取り上げた文章の性質を踏まえて、日本語の語彙運用の方略とその分析方法を総合的に示す。 なお、最終年度は、上記の問題に取り組みつつ、これまでの研究を踏まえた具体的な研究成果の公表に重点を置くことにする。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルスによる学会の対面大会中止やオンライン実施が相次ぎ、当初計画していた旅費の使用が制限されたため。それらについては、次年度に学会のオンライン大会等に参加するための設備の充実にあてるなど、対面での学会発表にかわる研究成果公表の予算として運用していくことで、適正な研究費執行につなげたい。
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