2019 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
19K13179
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
韓 喜善 大阪大学, 国際教育交流センター, 特任講師(常勤) (80756156)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 言語学 / 音声学 / 日本語学 / 撥音 / 日本語の音声の学習 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では、日本語において音韻的には対立しているにもかかわらず音声的な違いが曖昧になる現象について、特に、いわゆる撥音(ん)に母音が後続する場合に関して検討を行う。日本語において、母音や無声摩擦音(サ行音、ハ行音)に後続する撥音は母音に近い音声として生成されやすいため、「原因」や「鯨飲」あるいは「店員」や「定員」のような語の区別は日本語母語話者にとっても困難な場合がある。これは、日本語を外国語として学習する者にとっても、知覚のみならず生成においても困難であるため、このような環境での撥音の音声の実態について調査することは重要である。しかし、現状では日本語母語話者、非母語話者のどちらに対しても十分な調査が行われておらず、その実態は不明のままである。したがって、本研究課題では日本語母語話者と韓国語母語話者で日本語学習者を対象に生成と知覚の両面から音声学的な調査を実施する。 撥音は標準日本語の音声の中で最も多くの異音を持っているが、その音の詳細についてはあまり検討されていない。これまでの撥音の研究は、1拍分の長さに関するものがほとんどであった。撥音の実態を明らかにするためには、長さだけに止まらず、さらに検討範囲を広げる必要がある。本研究課題では、音響分析を通して母音が後続する場合における撥音の音声がどのようなものか(鼻音か母音か)調査する。また、知覚実験では、それぞれの話者群がイメージする撥音の音声とは何かを調査することで、撥音の認知につながる知見を得たい
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度については、撥音についての知覚実験を行った。日本語母語話者の結果に加え、韓国語を母語とする日本語学習者(初級、上級)についてレベルごとに分けて比較した。
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Strategy for Future Research Activity |
ア.2020年度:知覚実験 2020年度は、撥音についての「知覚実験」と「生成実験」の2つの実験を行う。知覚実験については、北京語母語話者で日本語を学習する者を対象に、前年度の韓国語母語話者と同様の実験を行い、母語による日本語音声の習得について検討する。生成実験については、実験で収録した音声を解析ソフトウェアを用いて音響分析する。音響分析時は、音韻的に撥音として生成されたと考えられる箇所が鼻音として生成されたか口音(母音)として生成されたかに重点を置いて行う。そのために、録音時に高性能で小型のマイクを2つ用い、2つのチャンネルにわけて録音する。すなわち、一つのチャンネルのマイクは鼻の入り口付近に付着し、もう一つのチャンネルのマイクは口の付近に付着した形で録音をする(本番前に練習の時間を設け、話しづらくならないようにマイクの調整をする)。録音した音声について、それぞれのチャンネルに表れた波形の振幅やその長さに注目しながら、音声分析を行う。同時に、スペクトログラム(横軸が時間、縦軸が音の周波数、描かれた色の濃淡が音の強さを表すグラフ)を観察しながら、短時間フーリエ変換により音の特徴を記述し数値化する。日本語母語話者の結果と学習者の結果とを比較する。学習者はレベルごとに分けて比較する。 イ.2021年度:総合的検討 生成と知覚とを関連づけつつ、各学習レベルの特徴について総合的な検討を行う。日本語母語話者、各レベルの学習者の撥音の認知の仕方とはどのようなものなのかまとめる。
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Causes of Carryover |
実験を行うための費用(人件費、書籍代)や、研究成果を発表するための旅費が必要である。
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Research Products
(3 results)