2023 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19K13179
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Research Institution | Osaka Shoin Women's University |
Principal Investigator |
韓 喜善 大阪樟蔭女子大学, 学芸学部, 准教授 (80756156)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 撥音 / 知覚判断 / 自由異音 / 学習者 / 学習レベル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、日本語の母音間の撥音の認知において「調音器官への接近の度合い」がどのような影響を及ぼすかについて知覚実験を行ったものである。日本語母語話者と学習者が、語中に「撥音+母音」と「母音+母音」を含むテスト語(五千円、ご声援)の3モーラ目の判断をどのように行っているかについて検討した。テスト語(五千円)の3モーラ目の音声は「閉鎖音」に加え、「母音」「鼻母音」「鼻音化した摩擦音」など完全な閉鎖が行われていない音声も含まれる。 日本語母語話者については、調音器官の狭窄が強ければ撥音として認知されやすいものの、むしろ 狭窄が緩い母音に近い音声の方が母音間において自然だと感じられるという点で、川上 (1987)の見解を支持するものであった。 一方、韓国語を母語とする日本語学習者については、韓国語のように語末鼻音を明確に閉鎖する言語話者にはこのような音声は撥音としての判断を下しにくかったものと解釈できる。特に、初級学習者は、撥音の知覚においても韓国語と同様に閉鎖鼻音として明確に生成されているかどうかに注目し、閉鎖が明確ではない撥音の音声を撥音として判断しない傾向があった。しかし、上級学習者は、調査した3群のうち最も正答率が高かったものの、母音間での撥音の自由異音としての母音の容認度は、 日本語母語話者の容認度に達していなかった。したがって、日本語母語話者のような判断という基準からみれば、上級学習者であっても撥音という音素の習得はまだその途上にあるとも解釈できるということが明らかになった。
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